「効率」と「連携」のバランスをどう取るべきか

どの組織にも仕事の役割分担はありますが、専門性が高まれば高まるほど、この「タテ割り」の傾向は強くなります。確かに、周りを気にせず目の前の課題だけに集中すれば、その時点での効率は上がるでしょう。そんな働き方が広がってしまうのも無理はありません。それでも、より高いレベルの仕事を目指そうとすれば、横の繋がりが欠かせない。このことには、多くの人が納得するのではないでしょうか。

ただし、「横の連携は大切だから、周りにもっと関心を持とう」というかけ声だけでは、なかなか風土は変わりません。

ここで効果的なのは、誰かが率先して周りの人との壁打ちを実践してみせること。その価値を具体的な形で示していくことが、実践的な一歩となるはずです。組織の中のリーダー的存在の方から率先して行動していただきたいです。

日本人の「正解主義」は学校教育にある

長らく学校教育では、「正解」があり、それにいかに早く正確に到達できるかが評価されてきました。それでも今、社会人の多くが実感しているのは、「正解がわからない」領域が増えているという現実ではないでしょうか。

日本人女性の先生が教室の黒板に書き込む
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確かに、最近の学校教育は「正解のない問いを探究する」方向に変わってきています。しかし、学校の入試制度をはじめとして、まだまだ「正解主義」は根強く残っています。

そんな環境で育ってきた人にとって、「わからない」ことは隠すべきもの、という意識は自然と身についてしまいます。「わからない」と言えば怒られる、評価が下がる、そんな感覚が染みついていれば、つい「わかったふり」をしてしまう人も出てくるでしょう。

「これからは仮説思考が大切だ」とよくいわれます。しかし、それが具体的にどういうものなのか、イメージしづらい人も多いのではないでしょうか。

実は、壁打ちは「仮説思考」そのものです。まだはっきりといえないこと、本当にそうかどうかわからないこと、自分の中でもモヤモヤしていること、そんな段階の思考を言葉にして、誰かに聞いてもらうことを勧めています。