「15分の対話」で部署横断のつながりを生む
日常的な仕事の中で対話することを心がけることに加えて、「顔を合わせて強制的に話す機会」をあえて作ることも有効です。
多くの組織では、決算期や四半期ごとに経営状況や方針を共有する場を持っているはずです。そんなとき、ただ個々に話を聞くだけで終わらせるのはもったいない。参加者同士がグループ対話できる時間を少し設けるだけでも、対話のきっかけになります。
各種イベントの後の懇親会は昔からの定番ですが、最近増えているオンラインイベントでも工夫はできます。例えば、後半15分だけブレイクアウトルーム(小グループに分けたオンライン対話)を設定して、部署を超えた小グループで感想を共有する。そんな簡単なしかけでも、人と人が出会う機会を作れます。
従業員同士が顔を合わせる機会を大切にしている組織では、業務以外でもさまざまな機会を作ろうという取り組みもあります。大きな組織なら、毎月、その月に誕生日のある人だけを集めた誕生日会を開いているところも。そこまで大げさでなくても、会議室で一緒にお弁当を食べるだけでも、十分な機会になります。
テープ一本で区切ったランチ会の驚きの効果
私自身、あるクライアント企業で面白い試みをしたことがあります。
「○月○日、社員食堂の一角で『農業ビジネス』に関心のある人が集まって一緒に昼食を取りたいと思います。興味のある方は自由にお集まりください」と社内に告知したのです。実際は社員食堂の一角をテープで簡単に区切っただけ。そんな簡単なしかけでも、部署を超えて同じ関心を持つ社員が集まって、その中からさまざまな対話が生まれていきました。
大切なのは、組織のコミュニケーションを活性化し壁打ちを広めていこうと思ったら、まず地道に小さな工夫で人と人が出会える場を作っていくこと。
かつては移動中の時間や昼食時など、自然な対話の機会がたくさんありました。オンライン化が進み、直接会う機会が減っている今だからこそ、こういった工夫がより一層重要になってきているのです。
壁打ちの効果を認識した組織の中には、半ば強制的な「仕組み」として導入するところもあります。例えば、上司と部下の間で「1on1」を義務付けたり、「壁打ちタイム」という時間枠を設定したりすることが考えられます。
こういった強制的な施策も、短期的な浸透を図るには確かに有効かもしれません。しかし、本当の意味で長く定着させていこうと思えば、「イベント」や「制度」よりも組織の「風土」として育んでいく視点が欠かせません。