なぜ義務的な「1on1」では真の対話は生まれないのか
イベントや制度は、確かにきっかけとしては大切です。ただし、単発のイベントでは一時的な盛り上がりで終わってしまいがちです。また、強制的な制度に従って仕方なくやっているだけでは、本当の定着は望めません。風土として根付かせるために最も重要なのは、組織のリーダーたちの日常的な振る舞いです。
では、壁打ちが自然に行われるような目指すべき風土とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。
Googleの研究がきっかけとなって、「成果を生み出し続けるためには、組織の中で心理的安全性が確保されていることが重要」という考え方が、今や多くの組織に広く浸透しています。間違っているかもしれないこと、はっきりしないこと、突飛なアイデアでも、すぐさま否定されたりバカにされたりすることなく、一度は受け止めてもらえる環境。それは、組織の中から新しい発想や変化を生み出そうとするとき、極めて重要な要素となります。
「自由に発言して」と言う前に耳を傾ける
壁打ちという対話は、まさにそんな性質を持つものです。だからこそ、心理的安全性の確保は欠かせません。
では、そんな組織をどう作っていけばいいのか。ここでは一つの重要なポイントに絞ってお話ししましょう。それは、組織のリーダーの態度です。
「うちの組織は心理的安全性を重視している」「自由に発言してほしい」。そんな言葉をいくら並べても、実際の行動が伴っていなければ意味がありません。むしろ、リーダー自身が良い「壁」となって社員の言葉に耳を傾け、しっかりと受け止める姿勢を見せること。それこそが、「この組織は本当に心理的安全性が高い」と実感してもらえる近道なのです。一人の社員が壁打ちで感じた安心感は、やがて組織全体に広がっていくはずです。
同じ部署の中でも、また部署を超えても、周りの人に関心を持てているかどうかは、組織によって大きな差があります。関心が強い組織には一体感が生まれますが、そうでない組織はいわゆる「タテ割り」になりがちです。