トップ陣には、決断をあえて先延ばしにする人が多いのも事実です。理由は、自分で責任を取りたくないからでしょう。もちろん、決断したものの予想が外れ、結果的に間違いだったということもある。私たちも危険を感じて避難したものの、幸い大事には至らず1週間で東京に戻ってきました。「おまえはバカだ」と言われたとしても、それはそれで受け止めればいい。何があっても命ある限り人生は続くのですから、結果を恐れることはありません。たとえ一時的に社内など周囲の人々といがみあったとしても、いつかはそれを忘れて前へ進まなくてはならないのです。

とはいえ、正しい判断力を身につけるに越したことはありません。それにはまず、自分の人生で何が大事かという価値基準を決めることと、正しい情報を集めることです。

私自身、「20代は美しく、30代は強く、40代は賢く、50代は豊かに、60代は健康に」と、10年ごとに人生の指針を決めてきました。20代はまだ責任も小さいし、自由に好きなことをのびのびとやる。それが若さゆえの美しい生き方だと思います。30代は徐々に責任ある仕事も増え、子育てが始まり、人によっては住宅ローンを払うなど、肩にのる荷物が急に増える年代です。そのわりには収入が少ない。だからこそ、歯を食いしばって頑張れるだけの強さを身につける必要がある。

じつは、フランスのAP通信社にいた30代の頃、過度なストレスで胃潰瘍になったことがあります。会社で吐血して倒れたのです。転地療養をすれば治りは早いといわれたのですが、それでは仕事に戻ってこられなくなる。そこで、仕事をしながら毎日薬を飲んで、注射を打って、食事にも留意して、1年くらいで治すことができました。それからはストレスマネジメントも大事だと実感し、「あ、ストレスを感じているな」と思ったら大きく深呼吸。それだけで気持ちが落ち着き、血圧も下がります。