ほんの1秒くらいのことなのですが、そのとき初めて、自分にとって何が大切かを自覚しました。やっぱり家族なんだな、と。それからは、「仕事か家庭か」と迫られたら、迷うことなく「家族」と答え、相応の選択を行ってきました。フリーの記者や大学の教授など、個人単位で働いていたからこそできたのかもしれません。組織にあまり縛られない立場だけに、「ラクでいいよね」と言われることもよくあります。
企業などの組織に属していても、仕事をばりばりこなしつつ、いざというときは仕事より家庭を優先することもかまわないはずです。それなのに、日本のビジネスマンは常に会社に縛られているイメージが強いのはなぜでしょうか。
もちろん、「ここは自分がいないとダメだ」という使命感に燃えて仕事を優先している人もいるでしょう。けれど、「また休んでいる」「あいつ、逃げたな」と他人からネガティブに見られることを過度に恐れている人が大半なのではないでしょうか。他人の目を気にして周りに合わせているのであれば、それは非常にもったいないことです。判断力が欠如していると取られても仕方がありません。
普段から、自分にとって1番に優先すべきものは何か、2番目は何かといったプライオリティをつけていないと、今回の震災のような突発的なトラブルが起きたとき、迅速な行動が取れなくなってしまいます。会社を経営している私の妻は、地震後すぐ、全社員に自宅待機を通達しました。そして避難先の三重県のホテルから、パソコンで商品の受注や発注、納品作業を行っていました。
もし自分が会社に残ってやらなければならないことがあるのなら、まずは家族を安全な場所に避難させることも考えるべきです。危険を察知したら、迅速に判断する。これが家族、部下、自分を守る最善の手段ではないでしょうか。