男社会で過酷なサバイバルを求められている
「若さも人気も無くなったら、残るのは『トーク力』と『ど根性』と『人脈』よ」
これはある先輩女性アナウンサーから聞いた言葉だ。局に残るにしても人脈は大切だが、ましてやフリーになれば女子アナにとって大切なものはまさに人脈なのだ。
フリーになっても画面に出演し続け、人気者であり続けられる女子アナはほんの一握りしかいない。年齢を重ねるほど、その競争は激しくなる。「私はこんな有力者と面識がある」というステータスは、過酷なサバイバルを求められているフリーアナウンサーたちには、とても頼りになる柱のような存在になり得る。
ということで、女性アナウンサーは大物タレントとの飲食の席を断ることは非常にしづらい状況に置かれているし、チャンスと捉えて積極的に参加する側面もある。
そして、番組プロデューサーや制作幹部は、こうした「女性アナウンサーも同席する宴席の場をいかに巧みに設定するか」ということが出世に直結している。いかに「飲み会の席を盛り上げ、大物や事務所を満足させること」イコール「出演者との強力なパイプを持っていること」に直結する。
海外に比べても、タレントのネームバリューに重きを置きがちと言われている日本のテレビ業界において、こうしたパイプを持つことは即ち局内に置けるプレゼンスを高めることなのだ。面白い演出ができることや、企画力などはむしろ二の次だと言っても言い過ぎではない。
「社員を守れないテレビ局」の存在意味
こうした背景があるので、いくら世間からは非常識に見えようと、時代錯誤と感じられようと、なかなかこうした「女性アナウンサーを接待役とした大物タレント接待の場」はなかなかテレビ業界から無くならないのだ。
ただし、こうした接待の場をセッティングする上で、筆者が考える、プロデューサーならば絶対に守らなければならないと思うことがひとつある。それは、飲み会の場に参加してくれたスタッフたち、中でも女性スタッフたちに決して嫌な思いをさせてはいけないということだ。
特に女性アナウンサーたちは非常に忙しい。多くの番組の仕事を掛け持ちする中で、そして顔を出さなければならない会合も多い中で、わざわざ自分たちの「人間関係構築の場」に顔を出してくれたのである。
番組プロデューサーであれば、そうした宴席の場を「支障なく滞りなく盛り上げて終わらせる」ことも仕事のうちだ。スタッフ、特に女性スタッフを守ることも「支障なく宴席の場を終わらせる」上で非常に大切なことだ。
となれば、女性アナウンサーをはじめとする女性スタッフには「顔を出してくれたことに最大限感謝しつつ、早めに退席してもらう」のが当然だ。あとは自分たち「立場が上のオッサンたち」が引き受けて、とことんまで大物タレントの酒に付き合えばいい。
「社員を守る」とはそういうことではないだろうか。もっと言えば、こうした時代錯誤の接待の形式はそろそろ止めにしたほうがいい。もっとビジネスライクでドライな、誰の人権も侵害されることのない「新しい芸能界での接待のあり方」を構築することが、テレビ局の上層部に求められている大きな責任であるということは、疑いもないだろう。
(初公開日:2025年1月17日)