ゼロ・エネルギー・ビル:2030年までに新築。平均で達成が目標
究極の省エネビル、「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」をめぐる動きが活発化している。ZEBとは、省エネと発電・蓄電で正味(ネット)のエネルギー消費量がゼロのビルを指す。経産省は09年11月に「ZEBの実現と展開に関する研究会」の報告書を発表。10年6月に策定した「エネルギー基本計画」では、30年までに新築建築物の平均でZEBを実現するとの目標を盛り込んだ。「平均」とは、エネルギーを外部へ供給するビルが誕生することを見越しての表現だ。
12年2月には清水建設が日本初となるZEBの建設に着手した。山梨県の山林に建設する低層・複数棟の建物で、同規模オフィスと比べ45%の省エネを目指し、残る55%は太陽光発電やバイオマス発電、蓄電池などが賄う。
土地や環境資源が限られる都市部では、発電に多くを頼ることは難しく、ZEBの実現には省エネ性能の向上が欠かせない。経産省は12年、ZEB化を支援する補助金制度を新設。空調、照明、給湯など、5億円を上限に高性能の省エネ機器の導入を促す。
背景には「2020年25%削減」という温室効果ガス排出量の削減目標がある。その流れは原発事故による電力不安で加速。ZEBには、電力需要の緩和だけでなく、エネルギーの供給拠点としての期待も集まる。
ゼネコン各社も実現を急ぐ。大成建設は20年までにZEBを実現させる計画で、13年に竣工する3階建ての実験施設では、CO2排出量で75%削減を達成する予定だ。鹿島建設もZEBの実現を20年とし、11年に着工した複数のモデル事業では、従来比で40~50%の削減を計画する。清水建設は20年の「ゼロカーボン(CO2排出量ゼロ)」を目指す。CO2排出量はエネルギー消費量とほぼ等しく、ZEBと同義だ。12年8月には排出量62%減(標準オフィス比)と「カーボンハーフ」の先を行く新社屋を竣工した。竹中工務店は20年のZEB実現を目指す。04年竣工の東京本店社屋では自立型ZEBに取り組み、初年度には34%減(旧社屋比)だったが、11年には太陽光発電の増設などで約60%の削減を達成している。