現在でも、原子力損害については文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が中間指針を発表しています。将来、福島県在住者のがん発生率が有意に増えることがあれば、中間指針を改定して対応することになるでしょう。中間指針では、避難を余儀なくされたために負った傷害や疾病、健康悪化によって生じた損害についても、賠償の対象としています。避難時に躓いて骨折したり、避難所生活で健康が悪化すれば、賠償の対象になります。避難指示や長期にわたる屋内退避などで精神的苦痛を受けた場合にも、1人月5万~10万円の損害額を認めています(震災発生後1年以降は改めて算定)。
放射能のストレスが原因で心身に支障をきたした場合も、賠償請求は可能です。その場合は、自分の精神状態を記録した日記や医者の診断書などの証拠をつけて東電に請求書を提出します。中間指針の範囲内でも、東電の回答は早くて2~3カ月。範囲外の損害については対応が遅く、拒否されるケースもあります。拒否されたり賠償額に納得できない場合は、ADR(紛争解決センター)に持ち込んで調停へ。それでもうまくいかなければ裁判です。放射能でがんを発症した場合も同じ手順です。
(構成=村上 敬)