最低半年前には退職し選挙に専念
ほとんどの企業は就業規則で副業を禁止している。公職への立候補についても、規則で会社への届け出や承認を求めている場合がある。在職中の公職選挙への立候補そのものについては、労働基準法で労働者の権利として認められているが、立候補にともなう選挙活動については、その限りではない。
しかし現実には、会社勤めのかたわら週末や年次休暇を利用する程度の選挙活動では、国政選挙はもちろん、地方選であっても当選は難しい。真剣に当選を目指すなら、最低でも半年程度は仕事を休んで選挙活動に専念することが必要になる。
選挙活動のための長期休職を認めている企業も、なくはない。たとえば楽天の従業員であった武井俊輔氏は、同社の立候補休職制度を利用し、宮崎県の県会議員選挙に立候補、当選を果たしている。
パソナグループでは、社外での経験を会社に持ち帰ってもらうことを狙いとして、最長4年間、休職した後に復職できる制度を設けている。同社の浜田浩樹氏は、この制度を利用して、社員のまま東京都渋谷区の区議となり、その後も4年間、サラリーマン議員の身分で政治活動を続けた。
だがこうしたケースは例外で、多くの企業では選挙に立候補することを理由とする長期休職を認めてはいない。多くの候補者が選挙の半年前には退職し、無収入の状態で選挙活動に専念しているのが現状だ。
国政選挙と異なり、地方選の場合、数字上の競争率そのものは高くない。2010年3月末時点の調査によれば、全国の地方自治体(市区町村)の選挙の平均倍率は1~21倍。立候補者5人のうち4人が当選している計算だ。
とはいえ選挙では、議員活動を通じて地元に名前を売っている現職がやはり有利。新人が短期間の選挙活動で知名度、人気を逆転するのは、至難の業といえる。難関を乗り越えて当選を果たしたとしても、国会議員はともかく地方議員の待遇は、会社勤めと比べ、決して魅力的なものではない。