「こんなことならあの日、殺されていた方がよかった」
「業務の一環とはとてもいえないような辛いことだって耐えてきたつもりだった。(……)だから、いろんな我慢をしたそのさきに起きたトラウマ体験のせいで仕事がなくなってしまうなんて、到底受け入れられなかった。(……)あの日、殺されていた方が良かったとすら思った」(『透明を満たす』より)
殺されていた方が良かったとすら思うようなことは、そうそう業務の延長では起こりえない。
入院後、渡邊さんは強度の自傷行為を行い、さらに精神科に転院となる。そしてよき主治医と出会ったことを転機に、積極的な治療へと踏み出す。PTSDという診断を得て、自身の状態への理解が深まり、回復へのロードマップが見えたのかもしれない。
やがて彼女は「持続エクスポージャー療法(暴露療法)」という治療法に挑み、それは彼女にとっては非常に効果をもたらし、徐々に日常を取り戻していく。
『透明を満たす』での持続エクスポージャー療法では、トラウマのトリガーとなるものへの接触(エクスポージャー・暴露)を段階的に増やしていったそうだ。
例えば「見るとトラウマを呼び起こす食べ物」があったそうだが、まずはそれを見る、次はスーパーマーケットに行ってそれがたくさん並んでいるのを見る、そして、トラウマとなった出来事を自分の口で語る……。
メンタルの治療を受けていく様子を詳細に綴る
このような積極治療が功を奏し、早期に回復できたようだ(もちろん、この手法は医師の監督のもとですべきもので、自己判断でするものではない)。彼女にとってはエッセイを書くこともまた、回復のためのステップのひとつといえるのかもしれない。
なお、渡邊さんはフジテレビ勤務時代まではずっとロングヘアだったが、いまは短い髪になっている。単に気分やイメージを刷新したいからだろうか、と思っていたが、2023年6月の「トラウマ体験」以降、食事がうまく摂れなくなり、栄養不足から毎朝ごっそりと抜け落ちる自分の髪を見るのが嫌で、思いきってベリーショートにしたそうだ。