寝室写真は、PTSDで苦手になった日光と睡眠の克服を表現
渡邊渚さんはPTSDで不眠となり、治療途中には肌がボロボロになったそうだ。紫外線を避けるため、精神科の日光を完全に遮蔽された病室で過ごした日々のことも書かれている。自殺を図ってナースに止められたと思われる記述もあり、その傷も心配される。
それを知れば、寝室風のスタジオで撮った写真は「太陽光」と「睡眠」を克服したしるしであり、自傷した肌もきれいに治ったという証なのだとわかる。
また、小雨の中にたたずむ一連の写真。「トラウマ体験」は「2023年6月のある雨の日」に起こり、雨が降ればフラッシュバックを起こすようになったそうだ。
雨の中でのグラビアは、事件と同じ天候条件でももう大丈夫、という「暴露療法による寛解」を示しているのではないか。屋外でのロケは、雨天ならバラして予備日に移すことが多い。おそらく意図的に雨の中で撮ったのだろう。
フジテレビ入社前から2023年6月の事件、そして退社まで
文章量はしっかりとあり、アナウンサーとしての核には、音読が好き、言葉が好き、疑問を追究するのが好き、という子ども時代からの性格があったことがまず書かれている。
だが、フジテレビ入社後の描写は、明るいものばかりではない。
渡邊さんがアナウンサー採用試験という厳しい就活競争に勝ち抜いて入社したのは2020年。既に「ワークライフバランス」「働き方改革」といった言葉が全国的に普及したあとだったが、入社後は慢性的な睡眠不足がつづいた。職場の先輩らからは「休めば仕事を切られる」「男女交際はNG」といわれたそうだ。
男性との噂は厳禁と教えられ、友人からの誘いも断るようになり、常にオーバーワーク。その結果、メニエール病を発症するが、それを周囲に漏らすと「アナウンサーがそんな弱みを見せてはダメ」とたしなめられる。
女子アナというのは少しでも立ち止まればポジションを取られる職業なのだ、と考え、ハラスメントにも「ノー」といえない環境で仕事をしつづけた結果の「トラウマ体験」だったのでは、というのが一読しての感想だ。
トラウマ体験については、個人が特定できるような記述はないが、本人にとってどんなに強烈で辛い出来事だったかというのは端的に表現されている。