インドの躍進が続いている。インドで教育事業を立ち上げた松本陽さんは「その原点には教育がある。あまりの過熱ぶりに不正行為が横行している」という――。(第2回)
※本稿は、松本陽著、西岡壱誠企画『教育超大国インド』(星海社新書)の一部を再編集したものです。
日本とはまったく違うインドの受験事情
ここからは、インドの爆進を支えている教育についてお話ししたいと思います。
世界でも類を見ない規模と激しさを持つ受験戦争は、インドの発展を象徴する現象として注目に値します。日本では『ドラゴン桜』という漫画・ドラマが流行し、桜木先生というキャラクターが、「バカとブスこそ東大に行け!」というセリフを叫んで大きな反響を呼びました。しかし、インドの受験競争は、その規模においても激しさにおいても、私たち日本人の想像をはるかに超えるものと言わざるを得ません。
インドの若年層人口(0〜19歳)は約5億人。これは日本の総人口の約4倍、アメリカの全人口の約1.5倍に相当します。この膨大な若者たちが、限られた教育機会を求めて競争を繰り広げているのです。
『教育超大国インド』第1章でもインドの教育熱について触れましたが、インドの学習塾では、言葉を選ばずに申し上げれば、非常に極端な詰め込み教育が行われている、と言って差し支えないかと思います。
宿題の量も膨大で、寝る間も惜しんで勉強することが日常茶飯事です。インドの教育システムは厳格であり、数学は99×99までの計算が瞬時にできるよう求められ、それ以外の理数教育に関しても世界的に見てかなり高い水準にあります。
大学もインド工科大は世界的に高い評価を受けていて、卒業後は世界の名だたる企業に就職していくのみならず、約50%が卒業後すぐに起業・もしくは卒業後3年以内に起業予定とも言われています。