気持ちを落ち着けるにはどうすればいいか。精神科医の和田秀樹さんは「扇情的な情報があふれている世の中、『何が正しい情報なのか』を冷静に見極める目を養っていかないと、不安や焦りに悩まされる。例えば『血圧が高いと脳卒中になる』と信じている人がたくさんいるが、そこに明確なエビデンスは存在していない」という――。

※本稿は、和田秀樹『仕事も対人関係も落ち着けば、うまくいく』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

血圧を測定する人
写真=iStock.com/Ake Ngiamsanguan
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がん検診で「がんの不安を払拭する」は大間違い

事前に「解決策」を用意していない

気持ちが落ち着かない人には、不安が強いわりにソリューション(解決策)を用意していないという傾向が見られます。

心配事があるならば、その心配を払拭する方法を事前に考えることが大切ですが、そこに目を向けていないため、余計に心配が大きくなってしまうのです。

その顕著な例といえるのが、がん検診との向き合い方です。

がん検診というのは、がんを「早期発見」するためにあります。

進行する前にがんを見つけて、素早く治療を始めることで、命を守ることが一番の目的ですから、「がんが見つかるかもしれない」ことを前提にする必要があります。

この前提を考えずに、不安になっている人が多いのです。

「がんで死にたくない」と思うならば、最悪のケースを想定して、「どこの病院で、どんな治療を受けるか?」というソリューションを用意しておけば、本来の目的を果たすことができますが、それを想定しないまま、検診の結果に一喜一憂している人が意外に多いように思います。

こうした人に共通するのは、がん検診を「がんの不安を払拭するためのもの」と思い込んでいることです。

「がんではないことを確かめたい」という思いだけで検診を受けている人は、がんが見つかるとパニックになりがちです。

何の準備もしていない状態のため、目についた病院に駆け込んで、意に沿わない治療方針に直面して心身ともに疲弊する……というのが典型的なパターンといえます。

万が一の事態を想定して、自分のできる範囲でソリューションを用意しておけば、少なくとも、極端なパニックに陥るリスクは回避することができます。

結果ばかりを心配して、その先のことに目を向けていないと、不安と焦りに悩まされることになるのです。