自信を持って生きるにはどうしたらいいか。精神科医の和田秀樹さんは「『やりたくないことはやらない』という習慣を身につけておかないと、年齢を重ね体力や気力が落ちて、いろいろなことができなくなる自分が情けなくなってしまう。自分の得意なことを伸ばしていく方が合理的で、成果が出るようになれば自然と自信が湧いてくる」という――。

※本稿は、和田秀樹『仕事も対人関係も落ち着けば、うまくいく』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

変えられないものは諦めないと、焦りや不安が生まれる

変えられるものを変える

私が精神科医として用いている治療法のひとつに「森田療法」があります。

森田療法とは、精神科医の森田正馬先生によって創始された精神療法で、不安や恐怖を排除するのではなく、「あるがまま」に受け入れることによって、症状の安定化を目指すという療法です。

森田療法の基本的な考え方に、「変えられないものは成り行きに任せて、変えられるものを変える」という方針があります。

緊張や不安に振り回されない自信を育てるには、森田療法の考え方が役立ちます。

「変えられないもの」とは、生まれや育ち、学歴や仕事のキャリアなど、どうやっても変更できないものを指します。

「変えられるもの」とは、物ごとに対する向き合い方や取り組み方、考え方、視点など、自分の意志で変更や修正が可能なものが該当します。

変えられないものを変えようとしても、焦りや不安が生まれるだけです。

大事なポイントは、変えられないものと、変えられるものを分けて考え、変えられないものは諦めて、変えられるものに意識を集中することにあります。

それが自分の感情に振り回されない「自信」を育てるための最初の一歩となります。

森田療法の代表的な一例を紹介します。

人前に出ると、極端に緊張して、顔が真っ赤になることに悩む女性が、私のところに相談にきました。

彼女は、赤い顔を人に見られるのが恥ずかしくて、「こんな状態では、みんなに嫌われてしまう」と考えて、不安になっていたのです。

社交不安障害の一つである「赤面恐怖症」の典型的な症状といえます。

彼女の考え方を整理すると、人前に出ると緊張する→緊張すると顔が赤くなる→赤い顔を見られるのは恥ずかしい→こんな恥ずかしい自分は周囲に嫌われるに違いない→誰にも好かれることはないだろう……ということになります。