予想3:美容外科医が補助金狙って参画、安全ではない無痛分娩が増加

2024年12月、ある美容外科の院長を務める女性医師が、グアムにおける解剖実習で、「解剖しに行きます‼」「頭部がたくさん並んでるよ」と、観光旅行のようなお気楽コメントの後、遺体の前でピースサインをした写真をSNSに投稿して「不謹慎」「御遺体への敬意が無い」と炎上したのは記憶に新しい。この騒動は、後にテレビニュースでも報道され、美容医療業界の倫理観が疑われることとなった。

この女医に限らず、近年は若手医師の美容医療への就職が増加し、10年前の約4倍と言われている。中には「医学部卒業後の2年間の初期研修を終了したら、そのまま美容クリニックに就職」という人材も急増しており、彼らは「直美ちょくび」と呼ばれる。経験の浅さから、医療知識や技術のみならず倫理観を疑問視する向きも少なくない。無論、美容医療のほとんどの医師は技術も倫理観もしっかりした人だが、それでも一般病院より問題人材が存在する確率が高めなのは否めない。

また、近年の都心部の美容医療は供給過多なので、有名美容外科が突然閉院することも珍しくない。雇い止めされた医師の中には「睡眠薬を出すだけの精神科」「ED薬処方」「脱毛」「ダイエット専門クリニック」など、倫理観はさておき、収入が保証され(増え)れば全く違う分野でも躊躇せず転職する事例は決して珍しくない。

「笑気ガス(亜酸化窒素)」は美容外科や歯科でよく用いられる簡便な麻酔方法である。鼻から笑気ガスを吸入することで、ぼんやりとリラックスして痛みを和らげることが可能である。19世紀の無痛分娩は、クロロフォルムやこの笑気ガスなどを吸入することから始まり、現在でも一部の施設では使用されているようである。前出のSNSで炎上した美容外科院長の例を見るにつけ、「無痛分娩は補助金で儲かる」はずだと、「笑気ガスならやったことある! 簡単!」といった軽率なノリで元美容医師が笑気ガスによる無痛分娩に参入しないとも限らない。

さらに、競争の激化で経営危機に陥った美容クリニックや元美容医師、もしくは高額不妊治療の保険適用という制度改革を受け、体外受精や卵子凍結を積極的に全国展開するクリニックなどが、今回のような目先の補助金に飛びついて、無痛分娩クリニックに進出する可能性はある。

実は、医師免許があれば合法的に麻酔業務が可能で、麻酔科専門医資格は必須ではない。そのため例えば、外科で不要になった美容医師を、「笑気麻酔で無痛分娩できます」などと、産科クリニックに派遣するビジネスを始めるかもしれない。

ちなみに、妊娠初期の笑気ガス投与では奇形の報告があり、自然流産率の上昇も指摘されている。分娩室で深く考えず笑気を投与して、換気設備もないまま放置されると、待合室などにいる妊婦が吸入して、流産や胎児異常の原因になりかねない。

新たな助成金制度をぶち上げるのは簡単だが、医師の頭数を倍増させるのは並大抵ではない。前述したように「深夜も明け方も働くベテラン麻酔科医を倍増」はどう考えても不可能に近く、その他の不測の事態を招くリスクも多い。

小池都知事の今回のプランを歓迎する女性は多いが、その実現のために国民が犠牲になってしまっては元も子もない。

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