動物実験に比べて基準が甘い
たとえば、おなかを抱えて笑うような面白い動画を一定時間観たあとに血液中のNK細胞活性が上がっていたのに対して、天気予報のような笑わない番組を観た時にはNK細胞活性は変わっていなかった、だから笑うと免疫力がアップしているに違いない、というような話がしばしば出ています。
ところが、どの調査でも、調べた人(被験者)の数や実験回数が少なく、限られた数の人に対して特定の検査を一定回数だけ行い、観察された結果をそのまま解析するという単純な解析法のものが多いようです。
どうも人での実験の場合、実験動物で行われるようなしっかりとした対照群を立てた上での解析が少なく、被験者数や実験回数を増やしての再現性の確認をしないまま、最終結論に至っているものが多いように見えます。
そもそも朝と夜で約2倍違う
NK細胞の特徴②様々な要因で数値が変わりやすい
さらに、このような話の解釈を難しくするのは、血液中のNK細胞数がさまざまな要因によって簡単に変化するという点です。
たとえば、血液中のNK細胞数やNK細胞活性は日内変動が見られます。朝が一番高く、夜中に向かって大きく下がり、そもそも朝と夜中では2倍ぐらい値が違うのです。
ということは、時間のかかる実験操作をしてその前後のNK細胞数やNK細胞活性を比較する時には、その経過時間や実験を行った時刻を考慮に入れないといけないことになります(でも、そのようなことを考慮している研究はきわめて稀です)。
それと、血中NK細胞の数や活性は、睡眠不足やストレスなど、その時の体調や状況によっても大きく値が変わります。ということは、何かの調査をする時には、これらの点を考慮した上で被験者をそろえることが必要になります。被験者の検査前の生活状態、健康状態が多様であれば、出てくる結果も当然多様になる(ばらつく)からです。
しかし、そのようなことを考慮して被験者を選んでいる研究は少なく、むしろ都合のいいデータが出た時にそれをそのまま報告しているように見えます。