[3]「親近感効果」に屈する

「人間には自分と似た人間を採用、昇進させる傾向がある、とあらゆる調査が示している」と、『Who Are“They”Anyway?: A Tale of Achieving Success at Work Through Personal Accountability(「彼ら」とは一体誰か:個人のアカウンタビリティによって職場で成功を達成する物語)』(邦訳なし 2004年)の共同執筆者でもあるギャラガーは言う。「直感に従って採用の決定を下すとき、われわれは無意識のうちに自分自身を評価している。自分と候補者は相性がいいと直感し、それから理屈をこねてその直感を正当化するのだ」。

直感は採用の決定で重要な役割を果たすことがあるが、それはもっぱら、あなたが自分とは異なる考え方をする人間を見つけようと努力したあとの話だ。経営幹部チームに入る人間を採用するときには、これがとくに重要になる。相性のよい人間がほしいという気持ちがきわめて強いからだ。

幹部チームの文化にすんなり溶け込み、しかも異なる考え方をする人材を見つけるのは容易なことではない。だから、両方の基準を意識的に選定基準に盛り込まないかぎり、そのような人材はけっして見つからない。

[4] わずかのカネを惜しむ

あなたが提示している報酬額より6000~1万ドル高い額を望んでいるからという理由で、望ましい候補者を逃してはならない。候補者の決断で金銭が最も重要な要因になることはほとんどないが、それでも金銭は重要だ。

とはいえ、新規採用者に同輩をそれほど上回る額を払うことに同意すべきなのか。「公平さの問題はいつも出てくる」と、バーチェルマンは言う。「そのポジションに合った候補者が全員、あなたの組織の同レベルの社員より1万ドル多い報酬を望んでいるとしたら、その場合は、内部の問題に取り組む必要があるということだ」。

[5] 完璧な候補者を見つけようとする

完璧な候補者を見つけたいという思いから、採用担当マネジャーはえてして、「その職務に実際に必要な能力以上の能力を持つ候補者を探そうとする」と、人材紹介・コンサルティング会社、コムフォースの執行副社長、ブラッド・ターキンは言う。「必要以上の能力を持つ人材を採用すると、その仕事が十分やりがいのあるものではないことに気づいてすぐに不満を持つようになるかもしれない」。

望ましい候補者の数はこの先5年にわたり減少すると予想されている。理想的な人材がどこかにいるはずだと考える贅沢は、どの採用担当マネジャーにも許されなくなるだろう。だからといって採用基準を引き下げねばならなくなるというわけではないが、「欠点のない人間はいない」という事実を受け入れることは確かに必要になる、と個人指導の能力開発会社、インスピリカの創立者兼CEOのリサ・ジェイコブソンは言う。「人は同じことを繰り返し行うことで、その仕事を本当にうまくこなせるようになる。だから、採用は、あなたの評価基準で7の人材を見つけ、その人物が10になるまで育てることだと思う」。

(翻訳=ディプロマット)