トランプ政権はドル安を望んでいる

25年1月20日から2度目のトランプ政権が発足しますが、トランプ氏や通商政策を担当する高官はある程度のドル安を望んでいると言われています。米国の輸出に有利だからです。

トランプ政権では減税や大規模な公共投資も予想され、それは、米国の消費を促すことにつながり、現状2%台半ばのインフレ率が落ちない、あるいは再度上昇する懸念もあります。そうなると、2%のインフレ目標を掲げているFRBとしては、政策金利を下げにくくなることも考えられます。

一方、トランプ氏は、CO2削減にはあまり関心を示さず、「掘って、掘って、掘りまくれ」と言っているように、米国での石油や天然ガスの増産が予想され、エネルギー価格の下落も予想されます。

前回トランプ氏が大統領だった17年から21年の原油価格(ドバイ)は図表2のとおりですが、2020年はコロナがあり下がっていることを考えても、エネルギー価格が下がれば、米国のインフレ率にも良い影響があると考えられます。

【図表】原油価格の推移

米国の中立金利は3%、日本は1%程度

現状2%台半ばまである程度順調に下がってきた米国のインフレ率ですが、今後もある程度落ち着いた動きが考えられます。FRBは景気を過熱も冷やしもしない「中立金利」を3%程度と考えているようで、この水準くらいまで政策金利を時間がかかるかもしれませんが、下げていくと考えられます。

日本のインフレ率は、やはり2%台半ばで、こちらもなかなか落ちませんが、ある程度この水準で当面は推移すると私は考えています。日銀は、中立金利を1%と考えているようで、やはり政策金利を中立金利程度まで上げることを考えていると思われます。25年末には、その水準に近づく可能性があります。

これらのことを総合すると、今後、日米金利差は、4%程度から3%、場合によっては2%近くまで縮小する可能性があります。前回のトランプ政権のころに近い水準です。その金利差では、キャリー取引は起こりません。金利差が縮小していく過程でキャリーの巻き戻しにともなうドル売り・円買いが起こり、その分、円高に振れると考えられます。