「何かお困りのことはありませんか?」
顧客が抱えるニーズを探るとき、このようなフレーズで問いかける営業担当者は少なくない。しかし、この質問であぶり出せるのは、すでに顕在化している「問題」だけだ。問題を解決するだけの提案なら誰でもできる。競合に真似されない提案をしたければ、問題をさらに掘り下げて、顧客自身もまだ気づいていない「課題」をつかみ、それを解決する提案を練る必要がある。これが本当のソリューション営業ではないだろうか。
顧客の抱えた課題に迫るときに有効な手法が「仮説ヒアリング」だ。これは「事前情報」と「観察情報」から仮説を導き、それをもとにして「ヒアリング」を行い、顧客が抱える課題を抽出していく手法である。
事前の「仮説」は当たっても外れても収穫はある
具体的に説明しよう。事前情報とは、ホームページに掲載されている会社の沿革や事業内容、メディアで取り上げられた記事など、訪問の前に調べられる情報を指す。一方、観察情報とは、現場で直接、観察して収集できる顧客情報のことだ。たとえば顧客の店舗に足を運べば繁盛しているかどうかがわかるし、オフィスの受付や応接室に置いてある置物や掛け軸から、経営者の価値観が見えてくることもある。
仮説ヒアリングでは、それらの情報を材料にして、顧客が抱えているだろう課題の仮説を立てていく。たとえば人材紹介会社の営業担当者なら、「新聞で新規事業に乗り出すという記事を読んだ」(事前情報)と「1号店に足を運ぶと、たいへん繁盛していた」(観察情報)という情報から、「新規事業の成長スピードに社内の人的リソースが追いつかず、出店計画の足を引っ張る可能性がある」と仮説を立て、それをヒアリングで顧客に直接ぶつけるのである。