外資系クライアントの素晴らしいフィードバック
注意というと、ダメな点をピンポイントで指摘するイメージがあるかもしれません。ですが、大切なのはポジティブさ。指摘することがゴールなのではなく、より良くすることがゴールのはず。大前提となるのは、目指すべきポジティブな未来を相手と共有し、そこへ向かうモチベーションを高めることです。
外資系のクライアントへ企画をプレゼンしたときのことです。まず、ものすごくほめられました。「この短期間でここまで仕上げてくれただなんて」「どの案も独創的だ」という具合です。その上で、改めて未来の話が始まります。
「自分たちはこういうビジネスゴールに向かって試行錯誤している」「とても困難だが、現状を変え、今までにない未来を形にしたい」と、プロジェクトの初期から変わらず伝えてくれていた未来を改めて共有されるわけです。
そしてようやく、フィードバックが始まります。「この案のこういうところには可能性を感じるが、デジタルなど統合キャンペーンとしてつながりが弱い」「この案はキャスティングが素晴らしいが、キャストの魅力を十二分に引き出せているだろうか」と、何が足りていないのか明確なフィードバックは、最後の最後なのです。これ、順番が逆だとどう感じるでしょうか。
もしくは指摘だけだったらどうでしょう。だいぶ印象が違いますよね。注意では、プラスの未来と、そこへ至るために足りないピースを伝えましょう。ただダメなところだけ指摘するのは注意ではなく、不満をぶつけているだけです。
「ポジティブな未来」と「具体的なポイント」を伝える
【損】もっと気をつけて→【得】次からこうするともっと良くなる
「何かが足りない」と言われて、前向きに頑張れるかというと難しいでしょう。具体的に何をどう改善すればよいのかが曖昧だからです。注意で大事なのは、ポジティブな未来と具体的なポイントを伝えることです。「次からこうするともっと良くなる」という表現は、具体的なアドバイスと行動の指針を示すことができます。
例えば、プロジェクトの最中に「会議の進行、もっと気をつけて」と伝えてもあまり意味はありません。「もうちょっとテキパキとね」というのも、何がどうなればテキパキなのか解釈は人それぞれなのでもったいない。何が課題で、変えるとどうなるのかを具体的に伝えるわけです。「会議での時間配分を事前にまとめておくと、もっと議論に集中できますよ」。このように具体的な改善策を提示することで、相手は自分が何をどうすればよいのかを明確に理解できます。
曖昧なフィードバックは相手を混乱させてしまい、改善の妨げになると言われています。こちらの意図を探る手間が生まれてしまうからです。一方で、具体的なフィードバックは相手のモチベーションを高める効果があります。具体的な指示を受けると、相手は自分が何をどうすればよいかが明確になります。課題がスッキリするわけです。