「自分がやったほうが早い」と考えがちだが…

マネジャーがメンバーとうまくいかない原因の2つ目は「任せられないこと」です。

大企業の管理職でもない限り、多くの中堅企業・中小企業ではマネジャーもまたプレイヤーとして活躍するプレイングマネジャーであることが多いでしょう。

チームのリーダー職であるとしても、マネジャー自身も通常業務で成果を出す必要があり、加えてメンバーを育成して成果を出させなければいけません。

ただ、先述の通りメンバーがマネジャーと同じような成果を出せるとは限りません。多くの場合でマネジャー以下のパフォーマンスになることもよくあるはずです。

すると、今度は仕事を任せられない状態になります。

「誰かに任せるより、自分がやったほうが早いし、成果も大きい」「できることなら自分のコピーが5人欲しい」と考えがちになるのです。

確かに、一見すると正しく感じます。レベルも経験値も違うのですから、任せずマネジャーが仕事をしたほうが成果は出ますし、コピーが5人いれば5倍の成果が出るかもしれません。

ですが、これではチーム・組織の仕事にはなりません。

あくまでもマネジャーはプレイヤーでありながらマネジメントを行わなければいけないので、メンバーへ上手に任せていく必要があります。

そして、任せたあとの関わりも大切です。

マネジャーはチームの仕事の結果に責任を持たなければいけませんので、メンバーに任せっ放しにした結果、成果が出なくてもいいということはありません。

オフィスのロビーを行き交う人々
写真=iStock.com/kokouu
※写真はイメージです

「あなたは無能である」と伝わってしまう

ですが、マネジャーが手を出したときに、助けてもらった事実よりも「任せてもらえなかった」「信じ切ってもらえなかった」「私は無能なんだ」とメンバーが自己肯定感や自分への価値を下げてしまうケースがあります。

これは、任せたあとの関わりによって「私のほうがすごい」「あなたは無能である」ということがメンバーに伝わっているということです。

これを避けるためにも任せたあとの関わり方が重要になってくるのです。

これは私自身が同じ経験をしたので気持ちがよくわかります。

かつて、チームのメンバーに指示した仕事があり、数日経ってもメンバーは何の成果物も出してこなかったことがあります。「遅い」と感じた私は仕方なく、メンバーに任せた仕事を自分で実行し、成果物を上長に提出しました。

そのことを任せていたメンバーに事後報告すると「どうして私に任せられた仕事を勝手にやるんですか? 私も取り組んでいたのに……私の時間は何だったんですか?」と言われました。

同じようなシチュエーションがあったとき、あなたはどう返事をするでしょう?

『君が遅いから俺が代わりにやったんだろ? むしろ感謝してくれよ』

メンバーの気持ちがわかっていないマネジャーであれば、こう返してしまうかもしれません。

マネジャー側の願望として最も大きいのは「この仕事を早く成功させたい」です。ですから、メンバーに仕事を任せて成長させるより、早く成果を出すことを優先して行動してしまいます。

ですが、それによってメンバーは成長しないばかりか、マネジャーへの不信感を募らせてしまうのです。