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粘れば認められる場合が多い

そこで全社員と1対1で面接し、辞めてほしくない人に「あなたには残ってほしい」と伝える一方、辞めてほしい人には「こういう制度があるから退職を検討してほしい」と実質的な退職勧奨を行う会社もある。

「できれば辞めてほしい」と会社が社員に退職勧奨することは違法ではない。もし社員が辞めたくなければ拒否すればよい。しかし、何度も面談を強要したり、執拗に退職を迫ったりすると違法性を帯びる。

大規模なリストラを行う場合も自分から挙手する人だけでは足りないので、会社が社員に対して退職を働きかけることが多い。割増金に使える予算が少ないときも同様である。

希望退職を募っている状況で「おまえはだめだ」と引き留められるような社員は、優秀で相応の実績を残してきた人だろう。日本企業の実態としてはこうした場合、「かわいそうだから」と情にほだされて社員に割増金を払うことが多い。会社が希望退職への申し込みを拒否するのはあくまでよい人材を引き留めるのが目的である。その人材を引き留められなければ意味がないのである。

恋愛と同じようなもので、一度「辞めたい」と切り出した社員は引っ込みがつかない。会社としてもそのまま置いておくことは難しい。それに優秀な人が辞めると言い出すときは、たいてい転職先が決まっている。結局、引き留めても無駄ならこれまでの貢献も考慮して、「気持ちよく辞めさせてあげよう」という判断に落ち着くのだ。したがって、もし希望退職に応募して「おまえはだめだ」と言われたら、退職する決意の強さや「住宅ローンがあるんです」と情に訴えるのがよいだろう。

(構成=宮内 健 撮影=的野弘路)
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