兵庫県知事選挙で斎藤元彦氏が111万3911票を獲得し、再選した。『「嫌われ者」の正体 日本のトリックスター』(新潮新書)を書いたノンフィクションライターの石戸諭さんは「この選挙で逆風をダイレクトに受けているのは、かつて斎藤氏の「元上司」でもあった大阪府の吉村洋文知事(日本維新の会共同代表)だ。衆院選に続き、維新の後退があらためて浮き彫りになった」という――。
逆転勝利した斎藤知事と、逆風が吹く維新の会
世はまさに「嫌われ者」の時代である。時に大きな問題を抱えながら、方や熱烈な支持者が生まれ、もう片方に強烈に反対する人々がいる。中間にいる人々も彼らから目を離す事ができない――。
今、最も注目を集めているのは兵庫県知事に返り咲いた斎藤元彦である。対照的に逆風をダイレクトに受けているのは、かつて大阪府庁で財務課長を務めていたときの「元上司」でもあった大阪府知事の吉村洋文だ。
逆風は彼に、というよりも政党としての「維新」そのものに吹いている。
そもそも今回の兵庫県知事選も、維新はかつて推薦した斎藤の支援を見送ったが、繰り広げられたのはまったく規律のない選挙戦だった。
維新県議団はそもそも斎藤の辞職を求めない方針で動いていたが、8月の大阪・箕面市長選で維新の現職が敗戦したことで考えをがらりと変えた。県議会で不信任決議案に賛成に回った以上、斎藤の支援ができないことは理解できる。だが、問題はここからだ。在阪準キー局のアナウンサーから維新の参院議員に転じた清水貴之が立候補するも大惨敗を喫した。
清水は離党して無所属で出馬するという戦略を立てた。これ自体は政党カラーを薄めることで幅広い層からの支持を獲得する選挙の王道だが、完全に裏目に出た。維新系県議団の中には斎藤支持で動く者まであらわれ維新支持層を固めた上で無党派、他党支持者を狙うという清水の目論見は足元から崩壊したどころか、選挙戦で注目を集めることなく埋没する。
選挙結果は吉村と斎藤との間で関係修復がどう進むのかという新しい課題を生んでしまった。
国政レベルでも後退は明らかで、日本維新の会は大阪府内19の小選挙区で初めて全勝したものの、2024年衆院選で議席数は44から38に減少しただけでなく比例票も大きく減らした。