安倍派の壊滅は、高市氏の支持基盤消失を意味する。高市氏は10月31日にXへの投稿で自民党執行部への恨み節を展開した。自ら「役職もない自民党のヒラ政治家」と名乗り、「12日間の選挙期間のうち、11日間は(自分の)選挙区外で過ごした」のに「党本部からガソリン代や高速道路の通行料金が支給されるわけでもない」と愚痴り、「選挙後も、特に党役員から慰労の御言葉を頂いたわけでもない」と不満を露骨に示したのだ。
読売新聞の世論調査によると、石破内閣支持率は衆院解散前の51%から34%に急落し、自民党内では「来夏の参院選は石破首相では戦えない」との空気が広がっている。
石破首相に今すぐ退陣を迫れば政局が混乱するため、来春の予算成立までは石破政権で少数与党の厳しい国会を耐え、予算成立後に退陣させて緊急総裁選を実施して新しい首相に差し替え、イメージを刷新して参院選を乗り切るという相場観が出来上がりつつある。
安倍派衰退で遠退いた「高市政権」
けれども、来春に「石破退陣→緊急総裁選」の展開になったとしても、高市氏の勝ち目は薄い。少なくとも9月の総裁選よりも苦戦を強いられる状況なのだ。
9月の総裁選は岸田文雄前首相の任期満了に伴うもので、党員票と国会議員票が半々だった。高市氏は無派閥で党内基盤が極めて弱く、推薦人20人を確保するのも苦労し、一時は泡沫扱いされた。
ところが、党員投票で躍進するとの見方がマスコミ調査で広がり、小泉進次郎氏、石破氏と並ぶ三つ巴の戦いに。菅義偉元首相に近い小泉氏や石破氏を警戒する麻生太郎氏が土壇場で高市氏に乗り、決戦投票へ進出したのだった。
だが、緊急総裁選は高市氏を押し上げた党員投票が行われず、国会議員投票だけで決する。ただでさえ、高市氏には不利だ。しかも、高市氏を支持した安倍派の多くが落選し、国会議員票が目減りするのは避けられない。形勢不利になれば、麻生氏が支持してくれるとは限らない。
しかも緊急総裁選は、自公過半数割れを受けて、どうやって野党の協力を得ていくのか、さらにはどうやって過半数を回復させるのかが、最大の争点となる。
高市氏は野党とのパイプは強くない。とりわけ、野党第一党の立憲民主党は高市氏の右寄りの政治姿勢を強く警戒している。少数与党の高市政権が誕生すれば、国会は与野党激突で混乱し、ますます混迷を深めるだろう。
軽傷で済んだ麻生派と茂木派
石破政権は総選挙で躍進した国民民主党を与党陣営に引き込むことに躍起だ。国民は自公連立入りを否定し、個別政策ごとに是々非々で対応する「パーシャル連合」で向き合う。まずは政治資金規正法の再改正を求め、年末の予算編成・税制改正で「103万円の壁」撤廃やガソリン税減税を受け入れさせる戦略だ。