それ以前の過去数年間にわたり、同社の電動歯ブラシ市場は伸び悩んでいた。年間220万台と前年比横這いで、安定的に売れてはいたものの、目新しさはなかった。ユーザーも比較的高齢者が中心で、使用目的も歯周病予防などが多かった。市場は縮小こそしていないが、頭打ちという状態で、打開策が求められていた。
実際、調査してみると、歯磨きのタイミングは朝と夜が多く、昼は33%しかないが、そのうち66%は女性だった。また20代の女性だけで見ると7割が「外出先でも磨く」と回答していた。ただし、その98%が手磨きだった。外で電動歯ブラシを使用しない理由は「かさばる」や「音が気になる」が圧倒的。
そこでチームは、ランチ後の女性をターゲットに「OLの化粧ポーチに収まるコンパクトなキャップ一体型のデザイン」をコンセプトに掲げてみた。
メールだけでなく直接話さなきゃ
ビューティ・ヘルスケア商品チームの中でオーラル商品を担当する仕事仲間として交流があった3人は、頻繁にメールや電話で連絡を取り合うようになった。久保と石橋は同じ部署なので常に顔を突き合わせているが、問題は辰野だ。彼はグループ会社に在籍していて、徒歩で20分かかるビルにいるため、連絡はどうしてもメールが中心になる。でも、久保は石橋に「メールだけじゃダメだぞ。ちゃんと電話もして、ときどきは会わないとね」と常日頃から忠告していた。久保も新人の頃、相手の顔を見て話さないと企画の熱意や想いが伝わらないと先輩から教わってきたし、自身の体験からもそう感じていたからだ。
石橋は「電話はいいなと思ったのは、メールと違って一方通行の報告や連絡ではないので、少し余談が混じること。話が用件だけで終わらない効果があったことですね」と語る。ある用件を話し終わったあとで辰野が思い出したように「あ、あの例の件なんだけど」といえば、石橋も「それなら今から見にいきますよ」という流れになり、思いがけず会って相談する機会が増えていったという。