不動産サイトやチラシの情報だけで、中古マンションを買うとどうなるのか。『ルポ 秀和幡ヶ谷レジデンス』(毎日新聞出版)で築50年のマンションで繰り広げられた住民闘争について書いた栗田シメイさんは「闘争を機に、無事に相場通りの価格に落ち着いている秀和幡ヶ谷レジデンスだが、旧管理体制では今よりも2000万円近く低い価格だった時もあった」という――。
秀和幡ヶ谷レジデンス、東京都渋谷区
写真提供=毎日新聞出版
秀和幡ヶ谷レジデンス、東京都渋谷区

渋谷区のヴィンテージマンションの価値が下落した理由

東京・渋谷区の秀和幡ヶ谷レジデンスは、かつては管理組合の理事会の独裁を揶揄して「渋谷の北朝鮮」とも呼ばれた物件です。大量の謎ルールや不透明な独裁体制を強いる理事会が一因で、住民の暮らしは阻害され、資産価値も大幅に下落。こうした状況は、有志の住民たちが4年間の苦闘の末にマンション自治を取り戻すまで続きました。

理事会の横暴ともとれる言動や住民たちの勝利の要因などは、前回の記事で紹介しました。こうしたトラブルは、建物の老朽化や住民の高齢化が進んでいるマンションならどこでも起きる可能性を秘めています。

近年、東京23区では新築マンションの平均価格は1億円を超えています。なかなか手が届く金額ではないですよね。そのため、マイホームの購入に当たっては中古マンションを検討する人も多いでしょう。その際、“やばい物件”をつかまないためにはどうすればいいのか。

売り値を相場の30〜40%にしても買い手がつかなかった

私が秀和幡ヶ谷レジデンスの取材を通して学んだのは、「不当に安い物件には何かある可能性が高い」ということです。マンション価格の高騰を受け、もう都心では、アクセスも住環境もいい激安物件なんてほぼ存在しないと言っていい。そんな状況なのに相場より大幅に安かったら、何らかのマイナス要因があると疑うくらいでよいかもしれません。

実際、秀和幡ヶ谷レジデンスも、住民たちが政権交代を果たすまでは周辺の相場より格段に安く売り出されていました。現在は3000万円以上ですが、私が見たときには1000万円台のときも……。ある不動産会社の経営者は買い手がつかないため懇願されてやむなく購入しましたが、転売しようにも、売り値を相場の30〜40%に設定してもまったく買い手がつかなかったそうです。「理事会の存在を伝えると買い手がスーッと引いていってしまう」とも話していました。

相場よりも安いと思ったら、まずはマンション口コミサイトなどで事前に評判を調べてみることをおすすめします。ネット上の大きい掲示板は、都心部のマンションはだいたい網羅しています。口コミなのですべてが正しいとは限りませんが、「住みにくさを感じる」「こんなルールがある」といった情報は参考にできる部分もあるでしょう。