女性の8人に1人、男性の22人に1人が骨折
介護施設が少なくとも高齢者の転倒と骨折に関して安全でないことは、鈴川芽久美らによる通所介護施設利用者の大規模調査によって明らかになっている。8335人を調べた結果、1年間の転倒率は25.3%。男女間では、転倒率はほとんど差がなかったが、骨折率は男性4.5%に対して、女性12.2%、女性の方が2.5倍も高かった。
介護度では、ある程度動けるような要介護度3から4がもっとも多かった。入所者の4人に1人が1年に1回転倒し、女性の8人に1人、男性の22人に1人が毎年骨折しているのだ。介護施設こそ転倒、骨折対策を真剣に考えねばならない。「拘束」しないという「除外的な対策」から、安全策を取り入れる「前向きな対策」に変更すべく、介護関係者は厚労省に声を上げてほしい。厚労省も誠実に対応してほしい。
高齢者の病院・施設では向精神薬が大量に使われている
さらに、今回の「事件」で分かったのは、高齢者の病院、施設では、向精神薬が安易にしかも大量に使われていることであった。妻がリハビリ中に意識がもうろうとしていることが多いため、投薬を確認したところ、精神科医が驚くような量の向精神薬(クエチアピン)を朝昼晩のまされていた。これは、目に見えない「拘束」ではなかろうか。
転倒の多くは朝方に家の中で起きる
イメージとしては、骨折は外で転んだときに起こると思うであろう。ところが、東京消防庁の救急車の「高齢者の事故」記録によると、普段住んでいるところが60%を占め、道路、交通施設は31%であった。
家の中で転ぶ場所は、居室・寝室がもっとも多く76%であった。辻一郎によると、転倒する時間は、意外にも疲れが溜まっている午後ではなく、早朝の3時から増えはじめ、午前6時にピークになるという。
ここで見えてくるのは高齢者が朝早くトイレに行くときに、床に置かれていた物に引っかかり転倒する姿である。床の物を片付けることが、転倒防止にとって重要であることが分かる(と書いて、机の周りを見たら、本と書類が山積みであった。今晩寝る前には片付けよう)。