75年に芸能界デビューした「おすぎとピーコ」は、それぞれ映画評論家、ファッション評論家という専門分野を持ちながらも「その道」のタレントの先駆者として活躍。90年代後半に、再びコンビとしてのブームが訪れ、それが後の「オネエブーム」につながったのは言うまでもありません。

そんな「オネエブーム」の端くれにいた私が、「おすピー」のふたりとご一緒したのは2010年頃だったと記憶しています。実際に会ってみて、初めて私はこの人たちに「憧れ」を抱いていたのだと気付きました。卑屈で、自虐的で、意地悪。だけど、信念が強く、志が高く、清らかで、やさしい。

何かの番組でピーコさんと対談した時に、「今こうしてたくさんテレビに出始めて、とんでもなく忙しいでしょ? でもね、消費される側に回るとね、たとえどんなに暮らしが豊かになってもね、5年もすれば枯渇するのよ。それは覚悟しておきなさい。あなたが30年以上かけてインプットしてきた経験や知識も、一度すべて空っぽになるから。私もそうだった。全部の引き出しがすっからかんになった。だけど忙しいとインプットが追い付かない。それからが勝負なのよ」と言われたことを、今でも折に触れて思い出します。

確かに、テレビで忙しく仕事をして早15年、見事に私は空っぽになった気がします。そして、もはや新たに何かを引き出しに入れる体力や気力はないに等しい。

それでも仕事がある以上、求められている自分を納品するのが芸能の世界です。出し殻に価値を見いだしてくれる客もいれば、出し殻だから安心して観られると言ってくれる客もいる。あとは手を変え、品を変え、だましだまし合いながらどこまで商品としてその値打ちを保てるか。ピーコさんの言った通りになりました。