なぜ建設社長がおいしい柑橘類を栽培しているのか

高校卒業まで宮崎で育った内山さんは関西の都市銀行勤務を経て、28歳で家業の建設会社を継ぐために帰郷。会社代表の傍らに農業法人を立ち上げて、5年前からへべすの大規模生産に参入した。

そのへべすだが、江戸時代に日向に住んでいた長曽我部平兵衛ちょうそかべ・へいべえさんが山中で香りのよい「酢みかん」を見つけたのが始まりとされる。自宅の庭で苗木を育て、近所の人に分けたことから、「平兵衛さんの酢みかん→平兵衛酢(へべす)」と呼ばれるようになった。

かぼすやすだちより皮が薄く、種が少ないために果汁がたっぷりなのが特徴だ。称賛の声はあちこちから届く。

「えぐみが少なくて料理にもドリンクにもよく合うね」
「上品で柔らかな酸味が、料理やドリンクの味を引き立てる」
「果汁はクセがないのに、クセになる。存在感がしっかりある」
「種がほとんどないために果汁が搾りやすい」

とりわけシェフやパティシエなど、厨房の現場に立つ人々に大好評なのだ。

成分分析結果によると、「コク」「うまみ」「香り高さ」などの項目も他の柑橘を大きく上回る。さらに栄養成分も見逃せない。

必須アミノ酸9種類のうち8種類を含むだけでなく、発がん抑制効果とがん細胞の増殖抑制効果があるとされる「ナツダイダイン」が豊富に含まれるのだ。

左からへべす、かぼす、すだち
写真提供=ひむか農園
左からへべす、かぼす、すだち
ひむか農園のへべす、かぼす、すだち、レモン、ライムおよびゆずの食味成分
図表提供=ひむか農園
ひむか農園のへべす、かぼす、すだち、レモン、ライムおよびゆずの食味成分