BYOD方式採用の理由

「自分の好きな端末を利用して愛着が生まれることも期待して、というのがBYOD方式を選択した大きな理由です」(毒嶌係長)

宮城の県立高校では現在、タブレット端末の無償貸与が行われているが、いずれは保護者負担に移行する見込みだという。

「義務教育の小・中学校と違い、恒久的に国から交付金が出るわけではありませんから」(宮城県教委の担当者)

自治体の財政状況によって、購入支援に格差も生じている。

生活保護受給世帯や非課税世帯は負担がないことが一般的だが、東京都立高校の場合、保護者は一律で負担額が3万円以内に軽減される。多子世帯(23歳未満の子が3人以上)では1万5000円の負担額ですむ。

タブレット端末は「文房具」か

千葉工業大学工学部教育センターの福嶋尚子准教授は、タブレット端末の保護者負担への切り替えは「自治体が考える以上に大きい問題」と指摘する。

「自治体は、コロナ禍で公費負担にしたものを元の計画に沿って保護者負担に戻すだけと考えるかもしれませんが、保護者には相当の負担が生じます」

そもそも、いくつもの自治体が「タブレット端末は“文房具”」「個人で所有するから」という理由で、タブレット端末を保護者負担にしているが、それは法令に基づくものではないという。

1974年に都道府県教育長協議会が出した報告書「学校教育にかかる公費負担の適正化」によると、私費負担とすべき経費に「生徒個人の所有物にかかる経費」とある。この報告書の記載内容は教育行政で慣習的に用いられてきたが、法的な根拠はない。

福嶋准教授によると、「学校運営に必要なものや、授業で欠かさず使うものは学校設置者が負担するのが原則」。学校教育法第5条がそれを定めているという。

「子どもの学ぶ権利」の観点から

「タブレット端末を保護者に負担させれば、購入を断念せざるを得ない人が出ます。高校生の教育条件整備の水準を引き下げる行為です。子どもの学ぶ権利の観点からもっと真剣に考えるべきです」

文科省の調査によると、公立高校の学校教育費は年に平均約31万円(21年度)。支出上位の通学関係費は約9万1000円、授業料は約5万2000円だ。

「ここに新たにタブレット端末代が加わるわけです。経済的に厳しい家庭だけを支援すればいいという負担額ではない。そんなにお金がかかるんだったら、高校に行かせられないかも、と考える保護者も出てくるでしょう」

国は、子育て支援や教育の質の向上を繰り返しアピールしてきた。タブレット端末の導入はGIGAスクール構想のかなめだ。

「であれば、保護者の負担にすべきではありません。文科省の責任ある対応が求められていると思います」

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

当記事は「AERA dot.」からの転載記事です。AERA dot.は『AERA』『週刊朝日』に掲載された話題を、分かりやすくまとめた記事をメインコンテンツにしています。元記事はこちら
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