見た目における顎の重要性について、研究者たちは「選挙のチラシやポスターでは、候補者のほとんどが笑顔で写っている。これは顎のラインが強調されることも理由かもしれない」と推測しています。

サルと人間に共通する男性的な顔の特徴は、思春期に血中の男性ホルモン(テストステロン)の値が高くなることによって現れます。アカゲザルは顎の突き出た男性的な顔立ちの人間を、より地位の高い者と認識しました。つまり、男性的な顔を社会的地位の高さと結びつけて考えているということです。

サルの判定が現実の選挙結果と偶然以上の確率で一致しているということは、「顔に対する偏見が、人間とサルの間で共有されていることが示唆される」と研究者たちは述べています。

もっとも、選挙結果のすべてが「顔の男性度の強さ」で決まるとすれば、女性候補者は男性候補者に対してほぼ勝てなくなります。けれど、実験で使われた期間の選挙では、男女が競った選挙の約半数(48.8%)で女性候補者が勝ちました。

このことは、「選挙において、人間は顔以外の要因もちゃんと考慮している」とも考えられますし、実験で使ったアカゲザルはすべてオスだったので「リーダーを選ぶ時に、メス(女性)には別の判断基準がある」と言えるのかもしれません。

トランプvsハリスの予想は「接戦」――選挙アナリストの分析とも合致

アメリカで今秋最大の話題は大統領選です。研究チームは、もちろんトランプ氏とハリス氏の写真も並べて、アカゲザルに見せて「勝敗の予想」を試みました。

これまでの実験結果から、女性のハリス氏はサルの判定では不利になると予想されます。ところがサルたちは、トランプ氏に対してもハリス氏に対しても、同じ頻度と時間で視線を向けました。

視線の偏りが得票率の差を示すという実験結果も考慮すると、トランプ氏とハリス氏は接戦になるとサルは告げています。これは、人間の選挙アナリストの分析とも合致しています。

研究者たちは、トランプ氏が候補者となった過去の大統領選も写真判定を試みました。すると、前回(20年)の選挙では、トランプ氏の得票率は、顎の突出に基づく予測を大きく下回りました。

日本では初の女性総理の誕生は先送りになりました。果たして、アメリカでは初の女性大統領が誕生するでしょうか。1カ月後に注目しましょう。

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
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