遅刻寸前。高峰は能面のように白く、冷徹な目で
5歳から引退する55歳まで50年、撮影を無遅刻無欠席で通した人である。
「あるときね、前の晩から熱が出て、朝になっても下がらないから、さすがに今日の撮影は休ませてもらおうと思っていたら、その日は大雪で。撮影所から電話が入って『今日は雪がひどいから撮影は中止です』って。だから欠席にならなくて、無遅刻無欠席」、そう述懐して悪戯っぽく微笑んだのは75歳のときである。
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