以前から使われてきた「シナジス」

これら以外にじつはもう一つ、以前からRSウイルスを予防するために使われてきたモノクローナル抗体「シナジス(パブリズマブ)」という薬があります。これまではシナジスしかなく、保険診療の薬ですから接種できるのは以下の場合のみでした。対象者には、RSウイルス感染流行期の約6カ月間、毎月シナジスを投与します。保険診療ですから3割負担で、多くの自治体で乳児の医療費は無料ですから、本人負担はほぼゼロです。

・早産で生まれた
・生後早期から呼吸器に病気がある
・生後早期から循環器に病気がある
・免疫の病気がある
・ダウン症候群を持っている
・先天性食道閉鎖がある
・先天性代謝異常性がある
・神経筋疾患がある

こういった基礎疾患があると、RSウイルス感染症にかかった際にとても高確率で具合が悪くなり、入院が必要になります。命に関わるからこそ、保険診療として予防しているのです。

子を守るには妊娠中のアブリスボが最適

ここまでに3つの新薬、1つの既存薬について説明しましたが、この中で子どもをRSウイルス感染症から守る一番いい選択肢は、妊娠後期の女性がワクチン(アブリスボ)を接種することではないでしょうか。

なぜなら、前もってお母さんが接種することにより、赤ちゃんが痛い思いをすることなく、母子ともにRSウイルスから守られるからです。三種混合ワクチンやインフルエンザワクチンと同様に、RSウイルスワクチンも赤ちゃんが胎内にいるときにお母さんが接種しておくと、生まれたばかりの重症化しやすい時期に感染するリスクを減らすことができます。

祖父母の指を握っている乳幼児の手元
写真=iStock.com/LumiNola
※写真はイメージです

そして子どもに接する機会が多い高齢者には、アレックスビーかアブリスボをおすすめします。生まれてすぐのかわいい赤ちゃんに、自分がRSウイルスをうつしてしまったら後悔するでしょうし、お世話を任された際などに小さい子どもから高齢者にRSウイルスがうつってしまうこともあるからです。乳幼児とより年長の小児のいる家族の場合には、流行期間中に家族の44%が感染したとする報告があります(※4)

※4 国立感染症研究所「RSウイルス感染症とは