みんなで“コンプレックス話”をぐるぐる回した結果

グループワーク 「コンプレックス話」レース

三〜四人一組のグループをつくり、それぞれが順番に自分がコンプレックスに感じていることを明るく話す、というワークです。

あらかじめいくつかの話を準備しておきます。それを制限時間三十秒で話します。

たとえば、

「私は足が遅いのがコンプレックスです。運動会の徒競走ではいつもビリか、ビリから二番目で、とてもはずかしい思いをしています。歩くのは速いのですが。速く走るコツがあったら、教えてほしいです」

「私は忘れ物が多くて、母や先生からよく叱られます。記憶力が悪いのかもしれませんが、いいこともあります。いやなことがあってもすぐ忘れます」

といった具合に話していきます。

実際、授業で大学生にこのワークをやってもらったことがあります。

それでわかったのは、みんなで“コンプレックス話”をぐるぐる回すうちに、だんだんネタ(コンプレックス)がなくなってくることです。わずか四、五周で、「あれ、あと何がコンプレックスだったっけ?」という感じになりました。

学校の屋外で話す学生グループ
写真=iStock.com/shih-wei
※写真はイメージです

このグループワークに参加した学生からは、「自分のコンプレックスがたいした悩みではないとわかった」という声がたくさん聞かれました。

またグループで行なうので、クラスメートが意外なことをコンプレックスに思っていたことがわかったり、自分の弱点や欠点も明るく短く話せば仲よくなるきっかけになったりするんだという気づきも得られたようです。

つまり、コンプレックスというものは誰にでもある。

でも、それを気にならないようにすることはできるということです。

弱点や欠点があるから強くなれる

コンプレックスがあることは、けっして悪いことではありません。

どうとらえるかの問題です。「悩みのたね」と考えてしまうと、自分に自信がなくなったりして、いいことは何もありません。

けれども「エネルギーのもと」ととらえると、その価値が180度変わります。

そうなると、自分を成長させるうえでコンプレックスほど大事なものはないといっていいくらいです。

現実に、コンプレックスをエネルギーに変えて成功した人はたくさんいます。

たとえばバスケットボールで、めざましい活躍をしている河村勇輝(2001年~)選手と富樫勇樹(1993年~)選手。NBAでは身長二メートル級の選手が多いなか、河村選手は172センチ、富樫選手は167センチです。

けれども日本を代表する司令塔“Wユウキ”の活躍を見ていると、ほかの選手より背が低いことはマイナス要素どころか、強みでさえあるとわかります。

二人は、漫画『スラムダンク』(井上雄彦、集英社)の登場人物にたとえるなら、小柄だけれどスピードが持ち味の宮城リョータでしょうか。

タッパだけで、バスケができると思うんじゃねえぞ!
ドリブルこそ、チビが生きる道なんだよ!

リョータのこの言葉はそのまま、コンプレックスがエネルギーのもとになることを示しています。

また俳優の高橋英樹(1944年~)さんは、低音が響く、とても魅力的な声をしています。あるとき「いいお声ですね」といったら、意外な答えが返ってきました。

「もともとはすごく高くて、あまりいい声ではなかったんです。練習して、練習して、低い声を手に入れました」

時代劇のヒーローを演じるには、高い声より低い声のほうがはまります。高い声の高橋さんにとっては不利です。でも、そこであきらめることなく、声を低くする練習を重ねたからこそ、時代劇俳優として成長したのだと推察します。

練習は裏切らないし、練習して身についたワザは“一生もの”です。コンプレックスがあったからこそ、手に入れられる財産です。