「独居」よりも問題は難航することが多い
田中さんの場合も例外ではなく、最後まで問題となったのは母親でした。ゴミの処分に関しては母親が頑として譲らなかったのです。「これは私のモノでもあるんだから、勝手に触るな」という主張で、害虫やネズミによって近隣への迷惑になると散々伝えても、耳を貸さなかったそうです。
こうした場合には強制的な清掃や片付けも難しいことが多く、やはり認知症の方が独居している場合のゴミ屋敷問題よりも困難化します。逆を言うと、認知症だけが原因の場合には、さほど困難化しないのです。やや言い方が悪いですが、本人のモノへの執着や聞き分けの悪さによって、モノが多くなっているわけではないからです。
「私は掃除婦じゃないのに…」
その後の田中さんですが、いまだに母親はゴミ(モノ)への処分については承知していないとのことです。月に数回、彼女が実家に赴いて清掃する日々が続いています。周囲への迷惑に心を痛めているからです。
「片付けても片付けても、母は自分でゴミを分別したり、水回りを掃除したりはしないんです。……私は掃除婦ではないと心の中で叫んでいます」
父親の認知症発症に端を発したゴミ屋敷問題。
その根っこにあったのは、機能不全家族という問題です。
家族機能という観点で見ていくと、ゴミ屋敷問題にはこうした一面もあるのです。