定子に「皇子を産め!」と迫った意味

むろん、その時点では、道隆は自分の命が遠からず尽きるとは思っていなかっただろう。まだ定子も一条天皇も若すぎるが、早晩、定子が皇子を産めば、道隆はその外祖父だ。行く行くは外孫を即位させ、天皇の外祖父として自身の家系、すなわち中関白家の栄華をさらに盤石にする、という青写真を描いていたと思われる。

一条天皇像(部分)
一条天皇像(部分)[画像=別冊太陽『天皇一二四代』(平凡社)/真正極楽寺蔵/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons

その時点では、道隆は一条天皇に、定子以外の入内を許していなかった。しかし、父親である自分が死んで後ろ盾がなくなれば、ほかの公卿たちも娘を入内させようとするだろう。それに、いくら中宮の座に就いていても、皇子を産んでいなければ、定子の存在が中関白家の支えにならない。