見守り続けた親は最終的に子どもに恨まれる
スダチには、アメリカで引きこもりについて研究していたスタッフがいるのですが、いろんな引きこもりの方から聞いた中で1番多かったのが「親が何もしてくれなかった」とか「自分がこうなってしまったのは親のせいだ」という答えだったそうです。親御さんとしては、お子さんをそんな風にしたかったわけではもちろんないのに、見守り続けた結果、最終的にそんな風に言われると思うと辛いですよね。
親の役割は子どもの世話をすることではなく、子どもが自立できるようにすることなのだと思います。
――引きこもりの子をめぐっては「引き出し屋」が知られています。違いはあるのでしょうか。
僕たちはそもそも、お子さんとは一切会わないんです。再登校できるように環境を整えたり、お子さんにどのように言葉をかけたらいいかをオンライン(zoomによる再登校面談)やメール(再登校サポートメール)で助言しています。サポートする相手は親御さんであり、お子さんには僕らの存在も知られないようにしています。
でも、引き出し屋は直接家まで行って、そこから子どもを「引き出し」ますよね。親御さんから子どもを強制的に引き離すわけです。僕らはそうではなく、親御さんと子どもの関係をよくしようとするわけで、そこが全然違います。
不登校支援を有料で行うワケ
――不登校の子どもがいる家庭からお金を取ることに批判の声もあります。小川さんはどう考えていますか。
確かにNPO(非営利組織)という選択肢もありました。でも最終的に社会問題の解決を目的にすると考えた時に、持続可能であることが必要条件だと思ったんです。
寄付やボランティア頼みだと規模を拡大するのも難しいし、そもそもずっと続けることすら難しくなる。ちゃんとお金が回る仕組みを作って、中で働いている社員たちがしっかりと稼げるようにした方が、最終的にはより多くの人たちを救えると思ったんです。だから、社会問題の解決とビジネスの両輪を成り立たせることを目標にしてきました。
また、私自身が不登校を経験していない「当事者でない」ということも批判されることがありますが、一歩引いた冷静な目線でやれるのが、僕らの差別化できている部分かなと思っています。当事者の方はどうしても寄り添いすぎてしまう。子どもたちの気持ちが分かってしまうがゆえに、つらくて踏み込めない部分があると思っています。
スダチによると、初回相談は無料で、子どもや家庭の状況をヒアリングし、簡単なアドバイスを行っているという。希望者には有料で「再登校面談」を行い、親の接し方などをレクチャーする。ここまででサポートを終了する人は多いが、有料のメールサポートに移行する利用者もいるという。利用者は毎日、子どもの様子やどんな言葉かけを行ったかを報告し、サポーターがそれを踏まえてメールでアドバイスを返す。メール1通につき2000~3000文字程度。料金は4万9500円からになるという。
――料金が高いという意見もあります。
ありますね。たしかに安くはないと思っています。でも本当に子どもたちが再登校できるということには、何物にも代えがたい価値がありますよね。
それに私たちは毎日、親御さんの「伴走(相談サポート)」をしています。例えばカウンセラーに毎日相談するとしたら、30日で結構なお金になりますよね。フリースクールも何年も通うと考えると結構なお金になります。そう思うと、そこまで高くないのではないか。
親御さんには一生使えるメソッドを提供できているという自負もあります。
スダチの再登校率は90.0%で、平均19日で学校に行けるようになっています。無料だったらこれだけの再登校率は出せていないのではと思っています。有料にしてハードルが少し高くなっていることで、親御さんが「何とかやりきろう」と思うからこそ、これだけの結果が出ているという面もあると思います。