「アジア最後のフロンティア」争奪戦の構図と現状

拙著『ミャンマー進出ガイドブック』でも述べたとおり、現在、ミャンマー争奪戦における大きな構図は、「米国対中国」だ。その対立構造に、ドイツ、フランス、韓国、タイ、さらに遅れて日本が参戦している。

米国企業も日本企業も韓国企業も、各社エース級の人材をミャンマーに重点投入していることは、現地ではよく語られている事実だ。今のミャンマーは、世界中の企業のエースがしのぎを削る主戦場なのだ。

なんとエキサイティングなのだろう。これこそ、「アジア最後のフロンティア」の生々しい現状である。私が見る限り、米国企業のミャンマー進出とビジネス構築のスピードは、精緻に練られた侵攻作戦を思わせるほど徹底的で、経済進駐軍とも言えるほど組織立っている。約60年ぶりに発売を再開したコカ・コーラの、ヤンゴン市内での流通の徹底ぶりを見ればその凄さがわかるだろう。

熾烈さを極める先進国の参入合戦について、現地のミャンマー人たちの間では、おおむね歓迎する声が多い。というのも、世界から孤立していた軍事政権時代は中国一辺倒で、劣悪品ばかりを買わされていたからにほかならない。

今、ミャンマーは国家を開放し、自由主義経済の中で諸外国の商品を享受できるようになった。外国による開発支援は、自分たちの生活を豊かにするもので、国の発展に不可欠であると肯定的に捉えているのである。

さて、ミャンマーにおいて「米国対中国」という構図ができた背景には、軍事政権時代に、米国やその他の自由主義国家が経済制裁に踏み切ったことがある。その隙に、中国が軍事政権に手を差し伸べ、資源開発利権などをほぼ単独で牛耳ってきた。実際、現時点でのミャンマーへの投資額における中国のプレゼンスは、他の国を圧倒的に上回るものだ。