ブラジルでX(旧Twitter)が突如として利用できなくなった。国内ではX停止派と再開派で世論が二分しているという。一体何が起きているのか。サンパウロ在住フォトグラファー兼ライターの仁尾帯刀さんが取材した――。
X(元Twitter)の所有者イーロン・マスク
写真提供=©Aloisio Mauricio/Fotoarena via ZUMA Press/共同通信イメージズ
ブラジル連邦最高裁判所(STF)のアレシャンドレ・デ・モラエス判事は、X(元Twitter)の所有者イーロン・マスクに対する調査を行うことを決定した

ブラジル最高裁が「Xの遮断」を決定

8月31日、ブラジルで突如X(旧Twitter)へのアクセスができなくなった。

ブラジル連邦最高裁判所(以後、最高裁)のアレシャンドレ・デ・モラエス判事の命令に従い、ブラジル電気通信庁が国内2万社以上のインターネット接続事業者にXの即時遮断を通達したためだ。

9月2日には最高裁第一小法廷において、裁判官5人が満場一致でブラジルでのサービス停止命令を承認し、以来、ブラジル国内ではXにアクセスできない状態が続いている。

寝耳に水のX停止にブラジルの各種メディアは今、傍若無人な言動で知られるX会長イーロン・マスク氏と強行的なモラエス判事のマッチアップを酒の肴に表現の自由と国家の主権のどちらが尊重されるべきかについて激論を展開している。

マスク氏がツイートしたアレシャンドレ・デ・モラエス判事逮捕を想起させる生成AI画像

世界4位のXユーザーを抱える国で何が起きているのか

人口約2億1531万人を数え、スマートフォンも普及しているブラジルは、Xにとっても大きなマーケットの一つで、世界で4番目に多い約2000万ユーザー(日本は2位)を数えている。情報発信にXを利用している自治体などの公共団体も多く、Xの停止は国内有数のコミュニケーションツールの一つが社会から奪われたに等しい。

最高裁がXの停止命令を下した直接の理由は、Xが8月17日にブラジル事務所を閉鎖した後も、ブラジルで海外企業が事業を行う際に必要な法定代理人を置かずにSNS事業を続けてきたことと、1800万レアル(約4億6000万円)に上る罰金の未払いだ。罰金はXが偽情報を発信するユーザーのアカウントの封鎖に応じていないことによるものだ。

モラエス判事の関係のない投稿に嫌がらせのコメントをしたマスク氏