大正ロマン風×大好きな道後温泉に似せた外観に

2019年には店を東京・北千住に移転し、東京で勝負をかける。

大正ロマン風のお店のコンセプトはまやさんによるものだ。温泉好きの2人は旅行で行った愛媛の道後温泉の雰囲気に惹かれ、道後温泉駅に見立てた店の外観にした。器も愛媛の砥部とべ焼だ。

「埼玉で味と店づくりを研究しブラッシュアップを重ねた中で、最終的には東京で出したいという思いがあったんです。三郷時代は『さなだ』を確立させる期間でした。

原価はどんどん値上がりしていましたが、多少高くなっても、原価を掛けることでより納得できる食材を使えると思い、煮干は伊吹いりこの最上級白口に、ベースに銘柄鶏の大山どりを使って勝負に出ることにしました」(瀨戸口さん)

大山どりを使うことで、以前よりも鶏の風味をさらに強めて旨味を深くした。売価は1000円に設定した。

もちろん「高い」と言われることは想定していたが、値段に見合ったものを作れば納得してもらえるだろうと思っていた。値段よりも安心安全で美味しいものを提供したいという思いが強かった。このタイミングで麺量を少し抑え、長さの変更をした。肉も研究し、数種類のチャーシューを仕込むようにした。

盛り付ける瀨戸口さん
筆者撮影

値段は「各都道府県の最低賃金ぐらいでもいい」

「私の持論ですが、つけ麺の値段は各都道府県の最低賃金ぐらいであってもよいのではないかと思っています。

初めは厳しい声も多かったですが、今は悪い評価は本当に少なくなりました。悪く思った人をそう思わせないためにはどうしたらいいかを常に考えてブラッシュアップしてきたので、その結果だと思います」(瀨戸口さん)

三郷にあった頃から女性の入りやすさにはこだわっていて、女性従業員が作務衣で接客するのも好評だ。来店客の男女比は7:3。ファミリー客も引き続き多い。

「女性や家族に対する目線は、女将がお店に立つことでより強くなりました。女将はもともと『さなだ』のお客さんだったので、好きなつけ麺をもっと広めたい、もっと知ってもらいたいという熱が強いんです。その中で、あくまで主役はつけ麺と店主と、サポート役に徹してくれているのはとてもありがたいです」(瀨戸口さん)

現在月商は400万~500万円。今年の10月で10周年を迎えるが、まだ完成形は見えないという。営業時間の見直しや盛り付けの変更など、試行錯誤の日々だ。

一年通して売り上げの波は少なく、お客は常連客が多く、安定している。足立区の選んだ「あだちの輝くお店セレクション」にも選ばれた。これからも「さなだ」は北千住の街とともに生きていく。

【関連記事】
閉店した元ラーメン店主が出題…追加具材「煮卵、チャーシュー、麺大盛、ネギ、海苔」を利益率の悪い順に並べよ
「ラーメン餃子定食」には衝撃を受けた…早大政経に通う中国人留学生が日本に来ていちばん驚いたこと
「お金が貯まらない人の玄関先でよく見かける」1億円貯まる人は絶対に置かない"あるもの"
年収180万円の飲食業界ではもう働けない…タイで年収1億5000万円を稼ぐ「博多ラーメン屋店主」の大きな夢
だからファミリー客が次々と来店している…快進撃を続ける「丸源ラーメン」と競合チェーンの決定的違い