自民党と公明党が連立を組んでから25年がたった。作家の佐藤優さんは「公明党には、自民党政治の暴走を抑え、平和を強化したという自負がある。一方で、この四半世紀で所属議員が内面から“自民党化”しているのではないか、という懸念も抱えている」という。法政大学法学部・山口二郎教授との対談をお届けする――。(第2回/全2回)

※本稿は、佐藤優・山口二郎『自民党の変質』(祥伝社新書)の一部を再編集したものです。

記者会見する公明党の山口代表=2024年7月24日午前、国会
写真提供=共同通信社
記者会見する公明党の山口代表=2024年7月24日午前、国会

山口代表「解散はすべきではない」

【山口】低支持率でも岸田政権が続いていることを「深海魚のようだ」と佐藤さんは第1回で指摘されましたが、それは岸田政権を脅かすような野党勢力がいないことの表れでもあります。むしろ私は、連立与党である公明党のスタンスに瞠目どうもくしました。

公明党の山口那津男代表は、「(裏金問題で)政治不信が深まっている状況を裏づけるように(岸田政権の)支持率が下がり続けており、信頼を回復するトレンドをつくり出さないかぎり、解散はすべきではない」と記者会見で発言(2024年3月5日)。

続いて、同党の石井啓一幹事長は、テレビ番組で「選挙で選ばれた総裁は、非常に支持率が高くなるということがある。総裁選挙(9月)のあと、今年(2024年)の秋が一番(解散の)可能性が高いのではないか」と語りました(BSテレビ東京「NIKKEI日曜サロン」3月10日)。

これらの発言に、私は驚きました。まさに驚天動地です。

公明党から岸田首相への「退場勧告」

日本国憲法は第七条で「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ」として、「三 衆議院を解散すること」と定めています。また第六九条は「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」としていますが、戦後、第六九条にもとづく解散が4回なのに対し、第七条による解散は20回。

そのため、議論の余地はあるものの、衆議院の解散は、首相の“伝家の宝刀”“専権事項”と呼ばれるわけです。

そこに連立与党のトップが踏み込んだ。これは、公明党による岸田さんへの、事実上の「退場勧告」です。首相の権限行使を公明党が主導・束縛した形だからです。3月の報道を見て、私は早急な解散はないと確信しました。

案の定、岸田さんは「今は政治改革などの先送りできない課題に専念し、結果を出すこと以外は考えていない」と記者団に話し(6月4日)、国会(第213回通常国会)を解散しませんでしたし、山口さんも「今、この支持率では(解散は)簡単ではない。政権は安定してこそ良い政策を実行できる。そういうものが勝ち取れるタイミング、状況をよく見るべきだ」と重ねて強調しました(ラジオ日本「岩瀬惠子のスマートNEWS」6月12日)。