公明党を怒らせた岸田政権の大転換

【佐藤】鋭いご指摘です。首相の解散権を連立与党が縛るのは禁じ手です。しかし、その禁じ手を、山口代表と石井幹事長は使った。公明党は岸田政権に相当怒りを覚えているのでしょう。おっしゃるように、公明党は岸田さんに対して「あなたには解散の時期を決められませんよ」と「警告」したのです。

なぜ公明党が怒るのか。端的に言って「防衛装備移転三原則」(以下、「三原則」)の改定(本書第2章で詳述)が大きな要因になったと私は見ています。

まず政府は2023年12月22日、「三原則」を10年ぶりに改定し、殺傷能力のある武器(迎撃ミサイル、大砲、弾薬など)の輸出を解禁しました。武器のライセンスを持つ外国の軍需産業に特許使用料を払って国内企業が製造する武器を、ライセンス元の国に完成品として輸出するというものです。

「ペトリオット」が代表例ですが、日本から「ペトリオット」がライセンス元であるアメリカに渡れば、ゆくゆくはウクライナで使われることになります。

公明党は「首相が国会で説明を」と歯止め

そして2024年3月26日には、政府はふたたび「三原則」の運用指針を改定して、イギリス、イタリアと共同開発する次期戦闘機(F-2後継機)を第三国に輸出できるようにしました。日英伊3カ国による共同開発は「グローバル戦闘航空プログラム」と命名され、2035年までに次期戦闘機の開発完了を目指しています。

公明党は、武器を第三国へ輸出可能とする場合には、岸田さんが国会できちんと説明し、ルールを厳格化すべきだと主張しました。公明党の若手政治家が自民党の動きに流されかねない恐れもあります。つまり「総理、いい加減にしなさい」と怒り、歯止めをかけた。

ひとまず岸田さんは、第三国への輸出について閣議決定を二重に設けるなど公明党の要求に応じましたが、自公の間で大きな軋みが生じていることはまちがいありません。