抱き枕をつかって横向きの姿勢で寝る

大きないびきをかいたかと思うとしばらく止まり、またいびきをかき始めるのは、睡眠中に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」の症状です。

呼吸が止まるたびに体が低酸素状態になるので、臓器や血管はそれをカバーしようと急激に働きを強めます。すると、血圧の急上昇や動脈硬化が起こり、結果的に心筋梗塞や脳梗塞を招く恐れもあるので注意が必要です。

いびきをかく原因は、「肥満によって首周りに脂肪がついている」「扁桃腺が腫れやすい」「生まれつきあごの骨が小さい」などさまざまですが、いびきでお悩みの人は、とりあえず寝る姿勢を横向きに変えてみましょう。

仰向けで寝ると、舌が喉の奥へ沈んで気道が狭くなる「舌根沈下ぜっこんちんか」が起こってしまいがちですが、横向きで寝ればこれを防げます。横向きの姿勢をキープするには、抱き枕を使うとよいでしょう。

いびきのお悩みがない場合は、「仰向けの大の字」で寝るのがおすすめです。

悪い寝相に見えるかもしれませんが、ほてった体をクールダウンし、深部体温を効率的に下げるには、この体勢がもっとも効果的。手足を広げると体を圧迫しないので、血流がさまたげられず、熱を放散しやすくなります。

さらに血流を促すためには、足元にクッションや畳んだタオルなどを置いて、心臓より高くしてもよいでしょう。血液が心臓に戻りやすくなり、血流が滞りがちな中高年~シニア世代にはとくに効果的です。

寝不足が原因で引き起こされるこわい病気

いびきや体のほてりを解消せずに放っておくと、体は慢性的な睡眠不足状態に陥ります。

睡眠は心身のコンディション維持に欠かせないものなので、睡眠不足が病気の引き金となってしまうことも多くあります。

睡眠不足で引き起こされる重大な病気には、次のようなものが挙げられます。

・がん
私たち人間は、生命を維持するために細胞分裂を繰り返しています。その細胞分裂の途中で「遺伝子のコピーミス」が起こったときに生まれるのが、がん細胞です。健康な人の体内でも毎日生まれていますが、そのたびに免疫細胞が働き、がん細胞を破壊してくれています。
がんを防ぐには免疫機能が正常に働いている必要があるのですが、深睡眠が足りないと免疫機能が低下するため、がん細胞の増殖を許してしまうことになります。

・糖尿病
シカゴ大学が行った実験によると、健康な若者の睡眠時間を4時間に制限したところ、わずか1週間で糖尿病の初期のような高血糖状態になってしまったといいます。
これは、血糖値を一定に保つ「インスリン」の働きが、睡眠不足によって急激に低下したためです。睡眠不足の状態が長く続けば、糖尿病を引き起こすリスクもそれだけ高まるといえます。

・うつ病
うつと不眠は、表裏一体の関係です。うつ病患者の大半は不眠を訴えており、不眠傾向の人はうつ病になるリスクが40倍に上がるといわれます。
また、国立精神・神経医療研究センターでは、4時間半睡眠が5日続けば、脳はうつ病や統合失調症に似た状態になってしまうとも発表されています。

・認知症
認知症の原因疾患としてもっとも多いのは、アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)です。「アミロイドβ」というタンパク質が脳にたまることで引き起こされる病気ですが、アミロイドβには、眠っている間に減り、起きている間に増えるという特徴があります。
つまり、睡眠不足が長く続くと、それだけアルツハイマー病になるリスクが高まるということです。

「寝ないと太る」は真実

睡眠不足が深刻な病気をもたらすことは先ほどお伝えしたとおりですが、なんと肥満にも影響しているということは、意外に知られていないのではないでしょうか。

なぜ睡眠時間が減ると太るのかというと、ホルモンの分泌が乱れるためです。

人間の食欲や代謝には、食欲抑制ホルモンの「レプチン」と、食欲増進ホルモンの「グレリン」が関わっています。

レプチンは、脳の視床下部にある満腹中枢に働きかけて食欲を抑え、エネルギー消費を促すもの。グレリンは、脳の視床下部にある食欲中枢に働きかけて食欲を増進させ、血糖値を上げる司令を出すものです。

この2つのホルモンのうち、どちらが優位になるかを決めているのが、睡眠時間です。

具体的には、6時間より減るとレプチンの分泌が減り、逆にグレリンの分泌が増えるとされます。つまり、寝ないと食欲に歯止めがききにくくなってしまうのです。

白濱龍太郎『朝までぐっすり眠れる 深睡眠スープ』(アスコム)
白濱龍太郎『朝までぐっすり眠れる 深睡眠スープ』(アスコム)

「そういえば寝不足の翌日、なぜか食欲が増したり、甘いものやスナック菓子が食べたくなったりする」ということはないでしょうか?

コロンビア大学の調査によると、平均睡眠時間7時間の人の場合、睡眠時間が6時間に減ると約2割、5時間に減ると5割、4時間以下ではなんと約7割も肥満確率がアップするという結果が出ています。

逆に、ぐっすり眠れていればホルモンバランスが整いますし、加えて基礎代謝量もアップします。なぜなら、ぐっすり眠っている深睡眠の状態では、脂肪燃焼作用がある成長ホルモンがさかんに分泌されるためです。

毎日ぐっすり眠るだけで太りにくい状態になれるなら、ダイエットに活用しない手はありませんね。

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