「永代供養」をめぐる誤解

一方で、永代供養の場合は、初期コストは抑えられる。だが、契約者以外の納骨はできないし、永代供養期限が来れば合祀されるか、再契約しなければならない。ここ20年ほどは、この永代供養に人気が集まっている。

永代供養の最大の特徴は「墓を持つことのハードルの低さ」だろう。都会に住む人が初めて墓を求める場合、檀家になることを前提にした寺、墓選びは敷居が高い。その点、無宗教式の永代供養は門戸が開かれている。だが、永代供養についての誤解は多い。少し説明しよう。

「永代供養」という用語は、古くから存在していた。それは、菩提寺の墓地の区画に設けられた「合祀墓」をさしていた。多くは石の観音像や仏塔などを立て、その地下に不特定多数の遺骨を納めた。だが、これは、あくまでも、檀家を対象にした永代供養墓であった。

この場合の目的は、一族墓を整理するためだ。一族墓の場合、収納する遺骨が増えたり、分家したりする時に増設することがある。田舎の境内墓地などで、先祖代々の墓がずらりと並べられている風景を、よく目にするだろう。百回忌や五十回忌などの弔い上げの際に、古いご先祖さまの遺骨を合祀墓に移して、祀り直す。また、檀家が絶家した時に区画を寺に返上し、遺骨を合祀墓に移す。本来の永代供養は、既存の家墓の受け皿として機能していたのだ。

多くの寺には絶家した際の遺骨を納める合祀墓はある
撮影=鵜飼秀徳
多くの寺には絶家した際の遺骨を納める合祀墓はある

それが近年、最初から永代供養墓を望む人のために、寺院や行政が永代供養墓を売り出し始めた。その嚆矢は、比叡山延暦寺大霊園だと言われる。1985(昭和60)年に募集が始まった。同霊園では子どものいない夫婦や独身者、墓地の継承者がいない人の増加を背景に、「あなた自身に代わって、永代に渡って比叡山延暦寺が供養する」という趣旨のもと、「久遠墓地」という名前がつけられた。比叡山延暦寺は天台宗だが、この久遠墓地では、宗教宗派を問わないのが特徴だ。

この時点では、永代供養はさほどの広がりを見せなかった。だが、多死社会に突入した2000年代後半から、永代供養墓が本格的に拡大していく。都会に出てきた団塊世代が終活ブームに乗って、本気になって「墓支度」を始めたからだ。

この個人で入る永代供養墓にはいろんなタイプがある。大別されるのは「露地型」と「納骨堂型」だ。

露地型には、石塔型のものや小さい石のプレートが設置されたもの、あるいは樹木葬などがある。なかでもこの数年は、樹木葬が最も人気がある。

納骨堂にもさまざまな種類がある。主流はコインロッカー式だ。扉の付いたロッカーの中に、骨壺を収納する簡素なものだ。防火上の理由があって、蝋燭や線香は使えない。また、生花や生ものを供えることを禁止している納骨堂も多い。

その代わり、空間やロッカーのデザインに趣向を凝らしたものが増えている。個々が漆塗り風の厨子のようになっている荘厳なタイプや、金箔仕様の豪華なものまで、さまざまである。