睡眠時間が短いと、あらゆる面で能力が低くなる
文部科学省が全国の小中学生を対象に行っている睡眠習慣の調査においても、同様の傾向を裏づける結果が出ています。
睡眠時間が6時間未満の子どもと6~8時間の子どもとを比較した場合、睡眠時間の短い子どもは学力だけでなく、50メートル走や持久走などでも成績が大きく劣ることがわかりました。
つまり、「睡眠時間が短い子どもは、頭脳や身体能力などあらゆる面で能力が低くなる」。これは、動かし難い事実なのです。
なぜこうしたことが起こるのか、脳の働きに着目して解説してみましょう。
[理由1]睡眠不足で脳のエネルギーが枯渇
第1の理由として、「睡眠不足によって脳のエネルギー不足が起こる」ことが挙げられます。
私たちの体は約37兆個の細胞で構成されていて、その細胞の1つひとつには、「ミトコンドリア」という器官が存在しています。ミトコンドリアは各細胞の中に数百から数千という数で存在し、人間の体重の約10%を占めるといわれています。
この無数のミトコンドリアが発電所のように働くことで、私たちの体を動かしたり、内臓を働かせたり、脳細胞を活性化させたりといった、あらゆる生命活動のためのエネルギーを生み出しているのです。
ミトコンドリアは、睡眠が不足すると、その発電所としての働きを低下させてしまうことがわかっています。
皆さんも、睡眠不足の翌日に「体がだるくて動きたくない……」となった経験があるのではないでしょうか。あのような状態になるのは、ミトコンドリアのエネルギー産生不足が原因です。脳細胞がエネルギー不足に陥れば、当然ながら、頭が十分に働かなくなります。脳機能が低下すれば精神状態にも悪影響が表れ、感情が不安定になったり、集中力も低下しますから、学習どころではありません。
脳の発達段階にある子どもが慢性的な睡眠不足になれば、あらゆる認知能力が低くなることは、避けようがないでしょう。