空港は真っ先に標的になる
実際に退避するときの流れを考えると、まず領事館から「たびレジ」を通じて事態の状況と、「輸送の準備をしている」旨の連絡が入ります。
台湾や韓国の場合、有事の際には空港や滑走路は真っ先に標的になりますので、実際の退避には飛行場は使えない状況になっている可能性が高い。
その際に、保護や救出が行われる場合、集合場所までどのようにたどり着けばいいかといった情報が、「たびレジ」を通じて旅行者に配信され、旅行者はそれを頼りに、集合場所へ向かうことになります。
ただし、有事発生時に通信網を遮断されてしまうと、これはもうお手上げです。最低限、スマートフォンなどの通信機器が使えなくなっても、領事館や港の位置などが確認できるような紙の情報を用意しておくと、備えとしてはさらにいいでしょう。
旅行前に有事を想定するということは、なかなか難しいことではあります。しかし、ホテルに着いたら非常階段や避難経路を確認するのと同じで、海外旅行に行った際には「もしもの場合、どこに向かえばいいのか」をまず確認する、ということを習慣づけておいた方がいいと思います。
アフガニスタン撤退が失敗した理由
――2021年のアフガンからの撤退の際は、韓国はすぐに動いた一方、日本が輸送を実施したのはその1週間後でした。
この時の在外邦人保護は自衛隊が関わったとはいえ、「輸送」のみのミッションだったにもかかわらず、後れを取ってしまいました。
いきなりアフガニスタン政府が崩壊してしまったので、輸送に関して同意を得るべき主体がなくなったという難しい面はあったのですが、それは各国とも同じ条件です。
韓国などは特に早い対処ができたのですが、これはやはり「軍隊が動く」点での違いがあり、日本と差がついたのではないでしょうか。
特に日本にとって障害だったのは、輸送に関しては「安全でなければ自衛隊を出せない」という縛りがあったことです。韓国をはじめ、他国の派遣は決定が早く、安全性よりも迅速性を優先しており、その点に対する国民からの反発もありません。
「安全ではない」状況になっているからこそ、保護・輸送が必要になり、自衛隊が出動する事態になっているにもかかわらず、日本では危険なところに自衛隊を出すなという声があるために判断が遅れる。これは在外邦人保護だけでなく、自衛隊の海外派遣全般にかかわってくる大きな課題です。