武器使用の正当性を裁く軍法がない

実はアフガン後に発生したスーダンでの邦人保護ミッションは、アフガンの事例が教訓となり、「安全かどうか」ではなく「適切な対処が取れるかどうか」という基準で検討し、奏功しました。

ただ、いまだに「やはり安全条件を残すべきではないか」「そうでないと、自衛隊が紛争に巻き込まれるのではないか」という観点からの反対論も根強くあります。

輸送ですらこの状況ですから、危険な状況下で邦人の生命を守りながら退避させる「救出」を実施するとなったら、よりハードルは高くなります。

というのも自衛隊の武器使用には「自己保存型」と「任務遂行型」があり、自分ではなくほかの誰かを守るために武器を使う場合、それが正当なものであったかどうかを裁く軍法が日本にはないのです。

これによって、政治決断が遅れる可能性が高くなります。国際法的には、武力の行使が禁止されている中で例外的に自衛権の行使を認めており、在外国民の救出も自衛権の行使として認められると解釈して活動を行っています。

「実際にやれるか」は政治決断

しかし、アフガンのケースを見ても、日本が自衛隊を動かす際に「自衛隊に力を持たせ、使わせるのは危ない」という思想を持つ憲法9条や法律の縛りがあるため、どうしても判断の遅れが生じるのです。

――どうも憲法議論は低調ですが、「いざというとき、自衛隊に助けに来てもらえない」となれば、国民としてはこうした問題も「我がこと」になります。

アフガンからの輸送時も、本来は救出を考えなければならない場面でした。邦人を乗せ、空港まで向かうバスを外務省が手配しましたが、陸上輸送は外国の軍に守ってもらわなければならず、それなしでは空港までたどり着けませんでした。

法律自体は自衛隊が救出もできるように改正していたのですが、「実際にやれるか」は政治決断になります。ぜひ多くの方に「我がこと」として考えてもらいたいですね。

(インタビュー・構成=ライター・梶原麻衣子)
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