犬・猫より日本人の方が下

海外で何かあったときに日本国民を連れ帰るにあたっては、外務省が第一義的な責任を負っています。防衛省・自衛隊は外務省主導の在外邦人保護のオペレーションを支援するというのが基本です。

救出が必要となった場合には自衛隊が前面に出てきますが、自衛隊単独ではできません。自衛隊はあくまで「支援」。特に台湾・韓国で有事が発生した場合に、自衛隊は安全保障面の対応に追われ、在外邦人保護に手が回らない可能性もあります。

また、米軍がどこまで協力してくれるかが、脱出までの時間やルート選定に関わってきます。ただしあくまでも米軍は「自国民最優先」であり、①米国市民、②その関係者、③ペットと来て、日本人は4番目。

自国民を守る責任は日本にありますし、国民自身も、自分でできることはする必要があります。

娘を抱きしめる制服姿の米兵
写真=iStock.com/jacoblund
※写真はイメージです

――もし自分が観光客だったとして、「何か」が起きたときに、どうすれば帰国までたどり着けるのでしょうか。

従前から何らかの有事の予兆があれば渡航禁止などの措置が取られますが、事態が急に切迫するとなれば、そうした措置もとれません。

その場合には、外務省が提供している「たびレジ」というサービスが役に立ちます。

外務省海外旅行登録「たびレジ」
外務省海外旅行登録「たびレジ

海外に行くときに必ず登録すべきサイト

登録しておくと、海外安全情報を配信してくれるというもので、「どこで危険な事態が起きているか」や、邦人保護や救出が行われる際には「いつどこに集合すればよいか」などをメールでお知らせしてくれるというものです。

これに登録しておけば、自分から情報を探しに行かなくても逐次、情報を配信してくれるので、実際に救助・輸送活動が始まる際の連絡網になる、まさに「命綱」なんです。

――海外には何度も行っていますが、全く知りませんでした。

在外邦人保護の件で外務省の方と話すと「たびレジがあるから大丈夫です!」と胸を張られるのですが、国民にはあまり知られていないのが現状です。

外務省としても登録している旅行者には一斉に情報発信できるのですが、登録していない人を混乱の中にある現地で探し出すのは苦労しており、旅行会社をあたり、宿泊先を調べていちいち連絡をすることになるので、情報伝達が遅れますし、漏れも出ます。

外務省のホームページにも海外安全情報は掲示されていますが、あくまでもざっくりしたもの。たびレジを通じて送られる情報はもっと細かくリアルタイムに近いものです。旅行前に登録するのは当然として、よく海外に行かれる方は直近の具体的な予定がなくても登録しておくことをお勧めします。

また、在外公館が作成した長期滞在者向けのマニュアルなどもアメリカなどと比べるとあまり親切なものではないので、長期滞在者の方もたびレジに登録しておくと身を助けることになるでしょう。