このままでは議論が袋小路に入り込んでしまう
「生物多様性」とはいったい、何なのか?
生物には、細菌など目に見えない微生物が含まれる。
県が2020年に開催した「ふじのくに生物多様性地域戦略シンポジウム」では、「『生物多様性』とは非常にわかりにくい概念だ」が結論だった。
それなのに、「生物多様性」が何かを明確に示さないままで、「生物多様性」専門部会の議論を始めてしまったのだ。
「生物多様性」で言えば、南アルプスは、キクガシラコウモリはじめコウモリの種類など非常に数多いことで知られる。
新型コロナウイルスの感染源は特定されていないが、SARSは中国広東省のキクガシラコウモリが感染源となった可能性が高いとされた。
当時、中国政府はキクガシラコウモリはじめハクビシン、アナグマ、タヌキなど1万頭以上を処分した。
さまざまなコウモリ類はじめ南アルプスでは数えきれない生物が生息する。ニホンジカと高山植物と同様に、食物連鎖の中ではすべての生物が関わりを持っている。
ニホンジカから高山植物を守る防鹿柵という人工物の設置が南アルプス全体の生態系保全に寄与するのかどうか全くわからない。
ニホンジカを含めてすべてを調査するとなると、長い時間と多額の費用が掛かってしまう。
JR東海が「代償措置」として防鹿柵の設置を提案することで、かえって議論が袋小路に入り込んでしまう恐れがある。