運動を続けなかった人たちに変化は起きなかった

被験者は、生活の中での活動の変化について、詳細な報告をすることになっていました。

「衝動買いの頻度」「喫煙量」「飲酒量」「カフェインの摂取量」「ジャンクフードの摂取量」「人との約束を果たした率」「人に親切にする頻度」などをはじめとする、生活の変化についてです。

すると、運動を続けた被験者には、好ましい行動が増え、好ましくない行動の回数が減るという傾向が顕著に表れました。著しい生活の改善が見られたのです。そして、それとともに、意志の力、自制する力などの向上の事実もはっきりと表れました。

Mさんに起こったよい連鎖と波及効果は、研究結果でも明らかになっているのです。一方、運動を続けなかったグループには、そのような変化は一切起こらなかったとのことです。

意志の力や自制の力を高められる

ではこれは、運動という習慣を身に付けたから起こったことなのでしょうか?

ここに疑問を持った研究者の2人は、他の習慣でも、それがスイッチとなって、新たなよい習慣が身に付いたり、好ましくない習慣と縁を切ったりすることができるようになるかどうかの実験を繰り返しました。

三浦将『改訂新版 自分を変える習慣力』(クロスメディア・パブリッシング)
三浦将『改訂新版 自分を変える習慣力』(クロスメディア・パブリッシング)

結論から言うと、家計簿を付ける習慣や勉強をする習慣をはじめ、両氏が行った実験においては、どんな習慣でも、同じように新たなよい習慣が身に付いたり、好ましくない習慣と縁を切ったりすることができるようになりました。そして、ここでも意志の力や自制の力の向上が見られたのです。

つまり、運動だけに限らず、たった1つのよい習慣を身に付けることによって、あなたの生活を向上させるための他のよい習慣が連鎖するように身に付いていく。これは、ミーガン・オーテンとケン・チャンの研究の結果に加えて、私の何千セッションというメンタルコーチとしての経験からも確信を持って言えることです。

【関連記事】
「帰ったらまず休憩するか、それとも家事か」自律神経の専門家が推奨する"疲れにくい"行動習慣
「何のために生きているかわからない」天涯孤独の40代相談者にカウンセラーが勧めた「意外な日課」
夜ぐっすり眠れない理由は「間取り」かもしれない…一級建築士が「絶対にやらない」という寝室の位置
「こんな生活を続けていたら40歳くらいで死んじゃう」過酷な研修医時代に心療内科医が見つけた"究極の休息法"
「脳トレはほぼ無意味だった」認知症になっても進行がゆっくりな人が毎日していたこと【2022上半期BEST5】